マーケティング予算の策定は、「どの施策にどのくらい予算を配分するか」を決める重要な業務です。しかし、マーケティング施策が多様化しているなか、予算の決め方や配分方法がわからないという声も多く聞かれます。本記事では、BtoBにおけるマーケティング予算の決め方や策定の流れ、注意点について解説します。
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BtoBマーケティングにおける予算の決め方
タッチポイントのデジタル化・多様化に伴って、マーケティング手法の選択肢も増えています。昨今はBtoBにおいてもマーケティングの重要性が高まっており、精度の高い施策選定および予算配分が成果の最大化に直結します。
しかし、これからマーケティングを強化しようという企業にとって、マーケティング予算を適切に策定することは簡単ではありません。
BtoBではどのようにマーケティング予算を策定するのか、まずは主な予算項目や決め方を見ていきましょう。
マーケティング予算とは
マーケティング予算とは、マーケティング活動を行うために計上する費用のことです。
BtoBマーケティングの施策は多岐にわたりますが、大まかに以下の項目に分類できます。
- 調査(市場調査、顧客満足度調査、NPSなど)
- 広告宣伝(Web広告、マス広告、屋外広告、DMなど)
- Webサイトコンテンツ(ブログ記事、ホワイトペーパー、LPなど)
- イベント(展示会、セミナー、ウェビナーなど)
- インサイドセールス
- 広報(プレスリリース、新製品発表会など)
- マーケティングツール(MAツール、広告運用ツールなど)
上記から事業成長に必要な施策を取捨選択し、各施策の費用対効果を見極めながら予算を策定・配分していきます。
新型コロナウイルスのパンデミック下ではマーケティング予算を縮小する企業が増えていましたが、デジタル施策の重要性が再認識されたこともあり、アフターコロナにおいてはマーケティング予算を厚くする企業の増加が予想されます。
マーケティング予算の主な決め方
マーケティング予算の策定方法は企業によって異なります。ここでは主な決め方を4つご紹介します。
1.売上・利益に対する比率で決める
前年度の売上や利益に対して、マーケティング予算の割合を決める方法です。例えば、「前年売上の3%程度」「前年の粗利の8%程度」など予算の目安を決めておくことで、一定のマーケティング費用を確保しつつ過剰計上を抑えることができます。
この手法では売上・利益とマーケティング予算が連動しているため、前年度の実績が悪ければマーケティングにかけられる費用も縮小します。そのため、マーケティング予算をしっかりと確保するためには、収益につながる確度の高い施策の展開が求められます。ともすれば負のスパイラルに陥ってマーケティング活動の縮小につながる可能性もありますが、着実に成果を上げれば、潤沢な予算で幅広い施策を展開できるようになります。
なお、この手法は継続的に安定した収益が見込める企業・事業に適しており、スタートアップや新規事業には適していません。
2.前年実績をベースに検討する
前年度のマーケティング費用の実績をベースにした決め方で、多くの日本企業が採用しています。この手法は前年の施策を踏襲することを基本としており、新たな施策を追加したい場合は「効果が低い既存施策と入れ替える」「追加予算を計上する」などを検討します。
シンプルな決め方なので予算を配分しやすく、前年の実績が悪くなければ経営層の合意が得やすいといったメリットがあります。ただし、前年の施策が今期の目標達成に貢献するとは限らないため、あらかじめ各施策の効果測定やマーケティング戦略を見直すことが重要です。
3.マーケティング目標から逆算して決める
来期のマーケティング目標をもとに、必要な施策を選択して予算を積み上げる方法です。例えば、「Web経由のリード獲得数を〇%増やす」といった目標を設定した場合は、オウンドメディアやリスティング広告などのWeb施策を検討して予算化します。
目標達成に必要な施策を明確にしたうえで予算を決めるため、経営層に対して予算配分の根拠を示しやすい手法です。単に「売上を上げたい」「顧客数を増やしたい」といった曖昧な目標ではなく、KGI(重要目標達成指標)やKPI(重要業績評価指標)など具体的な数値目標を設定することで、必要な施策を見極めやすくなります。
この手法は専門知識を要するため、マーケティングのリソースやノウハウがあり、緻密にマーケティング施策のPDCAを回したい企業に適しています。
以下の記事も参考にしてください。
マーケティングのKPI(指標)とは|KGI・KSFとの関係・KPIの種類と指標設定のやり方
4.同じ業界・規模の企業の予算を参考にする
自社と同じ業界・規模の企業の予算を参考にする決め方もあります。もちろん、他社のマーケティング予算と配分比率を正確に把握することはできませんが、広告代理店や調査会社などが業界別のマーケティング予算に関する調査データを公表しています。
調査データを活用すれば、同業他社の年間の広告費・販促費や重視している施策、施策別の予算の割合などを大まかにつかむことができます。マーケティングの経験値やノウハウが乏しい企業にとって、予算配分の目安になるでしょう。
マーケティング予算を策定する流れ
次に、マーケティング予算を策定する手順を見ていきます。マーケティング目標をもとに予算を配分する場合は、以下の流れとなります。
- マーケティング課題を抽出
- マーケティング目標の設定
- マーケティング計画の策定
- 各施策の費用対効果を推定
- マーケティング予算を配分
一つずつ説明します。
1.マーケティング課題を抽出
まず、マーケティング戦略・施策の現状を整理し、課題を洗い出します。集客・リード獲得・リード育成において、どのプロセスや施策が目標達成の阻害要因となっているかを確認します。
例えば、リード獲得においては「リスティング広告のCPA(Cost Per Acquisition:顧客獲得単価)が目標値の3倍かかっている」「ランディングページ(LP)経由の資料請求や問い合わせの件数が目標値の2割に留まっている」などです。
各施策の効果や売上に対する貢献度をチェックすることで、予算策定の参考になる知見が得られます。
2.マーケティング目標の設定
会社全体の売上目標や事業戦略をもとにマーケティング目標を設定します。BtoBではマーケティング部門単体で売上を作ることはできないため、各施策を通じてどのように貢献するのかを明確にすることが重要です。
具体的には以下のような目標を設定します。
- 1年間で新規リードを3,000件獲得する
- オウンドメディアのトラフィックを2倍に増やす
- 資料請求を1ヶ月あたり30件獲得する
- CPAを50%改善する
- 営業部門に引き渡すホットリードの件数を2倍に増やす
3.マーケティング計画の策定
マーケティング目標に沿って必要な施策を選定し、マーケティング計画を立案します。例えば、リード獲得数を増やす目標を立てた場合、展示会やウェビナー、オウンドメディア、Web広告などリード獲得に役立つ施策を洗い出し、ターゲット層の特性などを踏まえて選別します。
マーケティング施策を検討する際は、ターゲットのペルソナ(典型的な顧客像)やカスタマージャーニーマップ(顧客の購買プロセスを可視化したもの)を作成することをおすすめします。ペルソナやカスタマージャーニーが明確であれば、ターゲットの好みや行動パターンに合った施策を見極めやすくなります。
以下の記事も参考にしてください。
BtoBのリード獲得手法とは|12の施策と成功のためのポイント・事例
ナーチャリングとは|見込み顧客や既存顧客を育成する6つの手法と事前準備
【テンプレート付き】BtoBカスタマージャーニーマップの作り方と失敗を防ぐコツ
4.各施策の費用対効果を推定
選定した施策についてコストを算出し、費用対効果をシミュレーションします。施策の有効性を確認する重要なプロセスです。
マーケティング施策の費用対効果は、主に「CPA」「ROAS」「ROI」の3つの指標で確認します。それぞれの特徴を以下にまとめました。
CPA(Cost Per Acquisition) | コンバージョン1件あたりのマーケティング費用を示す指標。「顧客獲得単価」とも呼ばれ、コストパフォーマンスが高い施策を把握できる。 <計算式>CPA=施策の費用÷コンバージョン数 |
ROAS(Return on Advertising Spend) | 広告費用に対するリターン(売上)の割合を示す指標。 「売上回収率」とも呼ばれ、広告費1円あたりの売上金額を把握できる。 <計算式>ROAS=広告経由の売上÷広告費×100 |
ROI(Return on Investment) | 投資(投下費用)に対してどれくらいのリターン(利益)が得られたかを示す指標。施策の採算性を可視化できる。 <計算式>ROI=利益÷投資した費用×100 |
マーケティング目標に対する各施策のコストや効果を正確に算出することは困難ですが、大まかにでも割り出しておけば施策の優先順位を付けやすくなります。
5.マーケティング予算を配分
最終的に選定した施策のコストや費用対効果などをもとに、予算を割り振っていきます。このとき、各施策の媒体費だけではなく、制作費や外注費、広告運用ツールなども忘れずに計上しましょう。ターゲットに関するデータ収集を強化する場合は、市場調査や顧客満足度調査などの費用も予算化する必要があります。
すべての施策を予算計上したら、「会社の売上目標の達成に貢献できそうか」「マーケティング目標に沿っているか」といった観点で見直し、問題点がある場合は調整します。
マーケティングの予算策定時に注意したいポイント
マーケティング予算を策定・配分する際は、以下の4点に留意しましょう。
注意点1:施策ありきで考えない
課題・目標起点ではなく、施策ありきの考え方で予算を積み上げていくと、一貫した戦略のないマーケティング計画になってしまいます。戦略の軸がないため「あれもこれも」と施策を追加しがちになり、予算が膨れ上がる要因ともなります。
また、自社の商材やターゲットの特性を考えずに最新のマーケティング手法に飛びつくことにも注意が必要です。どの施策にもメリット・デメリットがあるため、まずは自社の目標達成に効果的かを見極めることが重要です。
注意点2:重点施策を明確にする
スタートアップや中小企業など予算に限りがある企業の場合、目標達成のために様々な施策が必要だとしても充分に予算を配分できないことがあります。各施策にわずかな予算を配分したところで、期待する成果は得られないでしょう。
複数の施策にまわす予算を確保できない場合は、「今期はナーチャリングより集客・リード獲得の施策に注力する」といった方針を定め、重点施策を1~2つに絞ることをおすすめします。少数の施策に予算やリソースを集中投下したほうが、一定の成果につながる可能性が高く、データやノウハウも蓄積しやすくなります。
注意点3:バッファを持たせて柔軟に対応する
予算はあくまでも過去の実績や推測に基づいた数値計画です。競争環境は随時変化しているため、状況に応じてマーケティング計画を見直すべき場面も出てきます。そのため、マーケティング施策や予算を緻密に固め過ぎてしまうと、期中の様々な状況に柔軟に対応できなくなってしまいます。
マーケティング予算を策定する際は、ある程度のバッファ(ゆとり)を持たせておくことをおすすめします。目安として予算の1~2割ほど多く見積もっておくと、「予想を上回る反響があった施策を延長する」「期間限定の施策を追加する」といった柔軟な対応がとれるようになります。
注意点4:各施策の運用体制を整える
様々な施策に予算を配分し、高い成果が見込めるマーケティング計画を立てたとしても、社内の運用体制が整っていなければ計画通りに実行できません。マーケティング予算を策定する際は、各施策を企画・実施するリソースや人員配置についても検討しておく必要があります。
社内のリソースが不足している場合は、予算内で対応可能な外注先を選定するなどの準備も必要です。どの施策にどれくらいのマンパワーを要するのかを検討し、効果的な運用体制を構築することで、各施策でしっかりとPDCAをまわせるようになります。
成果につながるマーケティング予算を策定しよう
マーケティング予算の策定方法には様々な手法があり、適切な決め方は企業規模や事業の状況などで変わってきます。
既存事業がメインで継続的に安定した収益が見込める企業では、収益に対して一定の割合をマーケティング予算に充てる決め方や、前年実績をベースにした決め方が適しています。スタートアップや中小企業の場合は、重点施策に予算を集中投下する方法のほか、業界別・施策別の予算に関する調査データなどを参考にするのも一案です。
より精度の高い予算を策定したい場合は、マーケティング目標から逆算して各施策に予算を落とし込む決め方が適しています。一定の経験値や専門知識が必要ですが、合理的に予算を配分することが可能です。
ただし、予算はあくまでも仮説であるため、期中の様々な状況変化に柔軟に対応できるよう、ある程度のバッファを持たせておくことも重要です。自社に合った予算の決め方で、成果につながるマーケティング戦略を策定しましょう。
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