BtoBマーケティングの成果を高めるうえで重要視されている「ナーチャリング(顧客育成)」。近年は、多くの企業が営業効率化のためにナーチャリングを強化しており、様々な施策を展開しています。本記事では、ナーチャリングのメリット・注意点や代表的な6つの手法、事前準備について解説します。
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マーケティングにおけるナーチャリングとは
ナーチャリングはBtoBマーケティングの成果を高めるうえで欠かせないプロセスです。まずは、ナーチャリングとは何なのかを見ていきましょう。
ナーチャリングの意味
「ナーチャリング(Nurturing)」とは日本語で「育成・養育」を意味し、マーケティング領域では「顧客を育成するための取り組み」を指します。「顧客を育成する」とは、自社商品に対する顧客の信頼性や購買意欲を高めて成約へと導くことを意味しています。見込み顧客(リード:Lead)を対象とする場合は「リードナーチャリング」と呼ばれ、既存顧客のナーチャリングと区別して用いられることもあります。
一般的なBtoBのマーケティング活動には大きく3つのステップがあり、ナーチャリングはその中核を担っています。
- STEP1:見込み顧客の獲得(リードジェネレーション)
- STEP2:見込み顧客の育成(リードナーチャリング)
- STEP3:見込み顧客の選別(リードクオリフィケーション)
Web広告やイベントなどで獲得した見込み顧客に対してアプローチ施策を展開し、自社商品に対する興味・関心を高めていくプロセスがナーチャリングです。ナーチャリング後の顧客は一定の基準に従って選別し、確度の高いリードを営業に引き渡します。
ナーチャリングの種類
ナーチャリングは新規の見込み顧客を対象としたリードナーチャリングを指すことが多いですが、既存顧客や優良顧客を対象とした取り組みも重要です。それぞれの特徴は以下です。
既存顧客のナーチャリング
すでに自社の商品・サービスを利用している顧客を対象としたナーチャリングは、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)の向上や優良顧客化を目的としています。具体的には、現在より上位グレードの商品へ誘導する「アップセル」や、関連商品とのセット販売を促す「クロスセル」などで顧客単価を高めます。
新規顧客を獲得してから販売に至るまでのコストは、既存顧客を維持するコストの約5倍かかるとされています。これは「1:5の法則」と呼ばれ、既存顧客を育成することの重要性やコストパフォーマンスの高さを示しています。
優良顧客のナーチャリング
累積購入額や購入頻度が高い優良顧客は自社商品に対するロイヤリティが高いものの、良好な関係を維持できなければ競合他社の商品に乗り換えられてしまう可能性があります。そのため、優良顧客に対しても適切にナーチャリング施策を行い、関係性を長期的かつ強固なものにすることが重要です。
優良顧客に対するナーチャリングでは、特別感のある顧客体験を提供するケースが多いです。例えば、「限定イベントに招待する」「特別割引をする」などの優遇策は顧客ロイヤリティのさらなる向上を図るうえで有効です。
ナーチャリングが重要とされている理由
BtoBマーケティングではナーチャリングの重要度が高く、多くの企業が注力しています。その理由は大きく2点挙げられます。
- 購買プロセスの長期化・複雑化
- 質の低いリードの増加
高単価かつ複数人が意思決定に関わることが多いBtoB商品・サービスでは、購買に至るまでの検討期間が長期化する傾向があります。加えて近年はインターネットでの情報収集が一般化しており、他社商品との比較検討などに時間をかける顧客が増えています。営業のアプローチだけで見込み顧客を長期間フォローすることは難しいため、検討期間を通して顧客と接点をもち続ける取り組みが求められています。
また昨今は、インターネットの普及による顧客接点の多様化に伴って、リードを多数獲得しやすくなった一方で、興味関心が薄いリードも多く混在するようになりました。全リードをそのまま営業に引き渡しても成約に至る割合は低いため、ナーチャリングでリードの「質」を高めることが営業効率の観点で重要視されています。
ナーチャリングのメリット・注意点
適切なナーチャリングを行うことで主に3つのメリットが期待できます。注意点とあわせて見ていきましょう。
メリット1:営業活動を効率化できる
自社商品に対する興味関心が低い見込み顧客にテレアポや訪問営業などを行っても空振りに終わるケースが多く、営業リソースが無駄になってしまいます。ナーチャリングを行い、受注確度の高い見込み顧客を営業に引き渡す仕組みを作ることで、アプローチを効率的かつ効果的に行えるようになります。
メリット2:休眠顧客を掘り起こせる
ナーチャリングは、過去に商談や取引を行ったものの現在は接点のない「休眠顧客」の掘り起こしにも有効です。休眠顧客は新規リードのように一から情報を集める必要がないため、適切なアプローチを行えば新規開拓より低コストで案件化できる可能性があります。
メリット3:顧客単価の向上につながる
自社商品・サービスに複数のプランがある場合、顧客はひとまず低価格のプランを導入する傾向があります。顧客が自ら高価格プランへの変更を申し出るケースは少ないですが、ナーチャリングによって各プランの違いやメリットを理解してもらうことで上位商品への切り替えが期待できます。
注意点1:人的リソースが必要
ナーチャリングでは、集めたリード情報を整理して誰に・どのような施策を展開するのかを検討し、各シナリオに沿ってWebコンテンツやセミナーなどを準備する必要があります。一度仕組みを構築すれば効率的な運用も可能ですが、多様なナーチャリング施策を企画・実行するためには一定のマンパワーや工数を要します。
注意点2:ナーチャリングの前に集客が必要
リードナーチャリングはすでに獲得した見込み顧客を対象に行うため、前提として十分な集客が必要です。育成対象となる顧客が少ない場合、ナーチャリングを行っても限定的な成果しか得られないため、まずはリードジェネレーションの施策を強化することが重要です。
注意点3:成果が出るまで時間がかかる
ナーチャリングは、顧客の状況に応じて段階的にアプローチを行いながら購買意欲を高めていく取り組みです。検討の初期段階にあるリードの場合、ナーチャリングの成果が出るまで数ヶ月~年単位の期間を要することも少なくありません。結果を焦らず、じっくりと腰を据えて取り組む必要があります。
ナーチャリングの代表的な手法6つ
見込み顧客や既存顧客をナーチャリングする手法は多岐に渡るため、それぞれの特徴を理解したうえで使い分けることが重要です。ここでは、ナーチャリングの代表的な手法を6つ紹介します。
手法1:メール
BtoBマーケティングにおいてメールを用いたナーチャリングは有効な手法です。主なメール施策を以下にまとめました。
ステップメール | 見込み顧客のアクションに応じて段階的にメールを配信する手法。例えば、「資料請求をしたリードにセミナーの案内メールを送る」など、あらかじめ設定したシナリオに沿ってメールを配信します。 |
セグメントメール | 顧客を属性や検討状況などで分類・リスト化し、セグメント別にメールを配信する手法。「業界別」「従業員規模別」「決裁権をもつ部長クラス向け」など配信先に合わせたメールを送付することで効果アップが期待できます。 |
リターゲティングメール | 「Webサイトにアクセスした」「メールを開封した」「URLをクリックした」など、特定の行動を起点にメールを配信する手法。商品・サービスに対する興味関心の度合いに応じて適切なメールを配信できます。 |
メールマガジン | 見込み顧客や既存顧客に対して定期的にメールを配信する手法。商品・サービスの詳細情報や課題解決に役立つお役立ち情報など、顧客の興味関心を高める情報を提供します。 |
手法2:SNS
近年は情報収集などにSNSを活用する企業が増えており、ナーチャリングの手段として有効です。企業アカウントを取得して商品の最新情報やオウンドメディア記事・導入事例のURLなどを投稿することで、理解促進や自社サイトへの誘導が可能です。TwitterやInstagram、Facebookなどプラットフォームによって特徴が異なるため、発信内容やターゲット企業に合ったSNSを選ぶことが大切です。
手法3:セミナー/ウェビナー
セミナーやウェビナー(オンラインセミナー)に参加する見込み顧客は、自社商品にある程度高い関心をもっているため、適切かつタイムリーな情報提供によって購買意欲を一気に高めることが可能です。質問にその場で回答するなど双方向のコミュニケーションが成立しやすく、自社に対する信頼性や安心感を醸成できます。
手法4:オウンドメディア
ブログ記事などのオウンドメディアでは、見込み顧客にとって有益な情報を記事コンテンツとして発信します。例えば、課題解決に役立つノウハウ情報や自社商品を導入した企業の活用事例を掲載することで、検討度合いを高めることが可能です。また、業界動向やソリューション情報をまとめたホワイトペーパーをオウンドメディアに設置する手法も効果的です。
手法5:リターゲティング広告
リターゲティング広告とは、自社サイトにアクセスしたことがある見込み顧客に対して特定の広告を表示する手法です。過去に自社商品に興味をもったものの、検討が進んでいない見込み顧客へのリマインド効果が期待できます。リターゲティング広告をきっかけに再び関心を寄せてもらえれば、次のアプローチにつながる可能性があります。
手法6:インサイドセールス
電話やメール、Web会議ツールなどで見込み顧客にアプローチを行うインサイドセールスがナーチャリングを実行する企業も増えています。インサイドセールスには「SDR」と「BDR」の2種類があり、アプローチ手法が異なります。
SDR(Sales Development Representative) | 顧客からの問い合わせを受けて対応する「反響型」のインサイドセールス組織。Web経由だけではなく展示会やセミナーなどオフラインで獲得したリードにもアプローチを行います。 |
BDR(Business Development Representative) | ターゲット企業を選定してアプローチを行う「新規開拓型・アウトバウンド型」のインサイドセールス組織。主に中堅企業や大手企業を対象とし、個社ごとに戦略を立てて働きかけます。 |
ナーチャリングを始める前の3つの準備
ナーチャリングの効果を高めるには、しっかりと事前準備を行うことが重要です。ここでは、ナーチャリングの前にしておきたい3つの準備事項を紹介します。
準備1:見込み顧客のリストを作成する
まずは、ナーチャリングの対象となる見込み顧客のリストを作成します。展示会やホームページの資料請求フォーム、訪問営業先など、オンライン・オフラインの様々なチャネルから取得した見込み顧客の情報をSFA/CRMやMAに統合しましょう。社内に散在している顧客情報を一元管理することで、抜け漏れや重複のないリストを作成できます。
準備2:見込み顧客を分類する
次に、見込み顧客を属性や行動情報などで分類します。自社商品への関心度合いや検討レベルは見込み顧客によって異なるため、ナーチャリングの方法も顧客の特性に応じて検討する必要があります。統合した顧客リストを以下のような項目で細分化し、セグメントに分けておきましょう。
<属性の例>
- 業種
- 従業員数
- 売上高
- 部署・役職
- 決裁権の有無
<行動情報の例>
- Webサイトへのアクセス履歴
- 問い合わせや資料ダウンロードの有無
- 展示会やセミナーへの参加有無
- 購買履歴
準備3:カスタマージャーニーマップを作成する
カスタマージャーニーマップとは、見込み顧客が商品を認知してから購買に至るまでの行動や思考・感情のプロセスを時系列でまとめた図表のことです。ナーチャリング対象の見込み顧客の購買プロセスを整理しておけば、「いつ・どのように・どのコンテンツを配信するか」といったナーチャリングシナリオを設定しやすくなります。マップ作成に必要な情報が不足している場合は、見込み顧客にアンケート調査やインタビュー調査を実施するのも一案です。
カスタマージャーニーマップやナーチャリングシナリオの作り方については、以下の記事を参考にしてください。
【テンプレート付き】BtoBカスタマージャーニーマップの作り方と失敗を防ぐコツ
リードナーチャリングにおけるシナリオの設計方法・作成例・効果を高めるポイント
ナーチャリングで営業を効率化しよう
BtoB商品は購買に至るまでのプロセスが複雑かつ長期化しやすいため、顧客の状況に応じた丁寧なナーチャリングが不可欠です。ナーチャリングを行えば、受注確度の高いリードを営業に引き渡せるようになり、営業は質の低いリードの対応に追われる必要がなくなります。また、既存顧客をナーチャリングしてアップセルやクロスセルを促すことで顧客単価の向上にもつながります。
営業の効率性や生産性に課題がある場合は、ナーチャリングの取り組みを強化してみてはいかがでしょうか。
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