リードナーチャリングにおけるシナリオの設計方法・作成例・効果を高めるポイント

リードナーチャリングを効果的に行うには「シナリオ」を設計することが重要です。シナリオを設計すれば見込み顧客の状況に応じて適切にアプローチしやすくなり、ナーチャリングの成果を高めることができます。本記事では、リードナーチャリングにおけるシナリオの役割や設計方法、作成例などについて解説します。

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リードナーチャリングにおけるシナリオとは

リードナーチャリングは、自社商品に対する見込み顧客(リード)の関心や購買意欲を高めるための重要なプロセスです。リードナーチャリングの成果を最大化するうえでカギとなるのが「シナリオ設計」です。

まずは、シナリオの役割やメリットなどの基本概要を見ていきましょう。

シナリオの役割

リードナーチャリングにおけるシナリオとは、「見込み顧客に対して、いつ・どのようにアプローチするのかを定めた筋書き」のことです。例えば、「特定のホワイトペーパーをダウンロードした見込み顧客に対し、翌日に自社セミナーの案内メールを配信する」など、顧客のアクションを起点とした施策実行計画を明確にしたものです。

検討期間が長いBtoB商品では、見込み顧客の状況に応じてきめ細やかにナーチャリングを行う必要があります。自社商品に対する関心度合いや情報ニーズは顧客ごとに異なるため、アプローチの成果を最大化するには様々なシナリオを設計して確実に実行することが重要です。

一般的に、リードナーチャリングのシナリオ運用はMA(マーケティングオートメーション)ツールで行います。MAツールにはシナリオ機能が備わっており、あらかじめ設定したシナリオに沿って自動的に施策を実行することができます。

以下の記事も参考にしてください。

MAツール導入・運用の基本|導入の流れと運用に失敗しないポイントを解説

【BtoB向け】MAツールの選び方|比較選定のポイントとおすすめツール7選

MAツールでシナリオを設計・運用するメリット

MAツールでリードナーチャリングのシナリオ運用を行うメリットは主に3つあります。

マーケティング業務の効率化

シナリオに沿ったナーチャリング施策の運用は手動で行うことも可能ですが、対象者の抽出・リスト作成やメール配信設定などに多大なマンパワーを要します。MAツールであれば、顧客のアクションをトリガーにコンテンツが自動配信されるよう設定できるため、業務を格段に効率化できます。手間のかかる定型業務が減ることで、担当者は生産性の高いコア業務に集中できるようになります。

顧客アプローチの機会損失を削減

リードナーチャリングの成功確率を高めるうえで重要なのは、顧客の状況に応じてタイムリーに施策を展開することです。メールを配信し忘れたり、コンテンツを取り違えたりするなどのミスがあれば機会損失につながります。その点、MAツールでは複雑なシナリオでも正確に実行するため、見込み顧客の課題や検討レベルに応じたタイミングで効果的にアプローチすることが可能です。

見込み顧客との良好な関係構築

顧客のニーズや購買プロセスが多様化している昨今、自社商品の成約率を高めるには顧客との関係性の構築が不可欠です。MAツールでナーチャリングシナリオを設計・運用すれば、多様な顧客とのコミュニケーションをパーソナライズ化・最適化することができます。適切なタイミングで必要な情報やコンテンツを提供することで、自社に対する信頼性の醸成および良好な関係構築を推進できます。

シナリオ設計に必要な基本要素

MAツールでシナリオを設計する際は、以下の4つの要素について決定する必要があります。

  • 誰に(ターゲット)
  • 何を(コンテンツ)
  • いつ(タイミング)
  • どのように(チャネル)

ひとつずつ見ていきましょう。

誰に(ターゲット)

シナリオ設計は、ターゲットを設定することから始めます。誰に対してアプローチするのかが明確でなければ、具体的な施策内容に落とし込むことができません。

ターゲットは顧客の行動を軸に設定するのが基本です。

<ターゲット設定の例>

  • ホワイトペーパーをダウンロードした人
  • 資料請求をした人
  • メールマガジンに登録した人
  • サービスサイトの料金ページに3回以上アクセスがあった人
  • 問い合わせがあったものの、それ以降のアクションが途絶えている人

リード数が多くアプローチ対象を細分化したい場合は、業種や従業員規模などの属性でセグメント分類することも可能です。

何を(コンテンツ)

ターゲットが決まったら、どのようなコンテンツを配信するかを検討します。コンテンツは、見込み顧客が次のアクションに移行するかどうかを左右する重要な要素です。

見込み顧客の課題やニーズを踏まえ、商品・サービスに興味を持ってもらえそうな情報を提供します。リードナーチャリングに適したコンテンツの例を以下に挙げます。

<コンテンツの例>

  • 商品・サービスの紹介資料
  • 商品の使用方法やノウハウ情報
  • 導入事例
  • 競合他社との比較資料
  • 新機能や新サービスの紹介資料
  • ウェビナーの動画や資料
  • 業界の市場動向や最新ニュース
  • キャンペーン情報

いつ(タイミング)

コンテンツを配信するタイミングも重要です。まだ関心が高まっていない顧客に対して毎日のようにメールを配信するなど、タイミングを誤ると自社に対してネガティブな印象を与えて接点を失ってしまうことがあるため、顧客心理に配慮して決める必要があります。

アプローチのタイミングは、主に下記項目に沿って検討します。

<配信タイミングの検討軸>

  • 時間帯(メールの開封率が高そうな時間など)
  • 特定の行動(料金比較資料をダウンロード、導入事例を閲覧 など)
  • 頻度(不快感を与えず、関心を薄れさせない適切な頻度)

どのように(チャネル)

コンテンツをどのようなチャネル(媒体)で提供するのかを決めます。見込み顧客に効率的に情報を届けることができる手段を検討しましょう。

<チャネルの例>

  • メール(ステップメール、メールマガジンなど)
  • Webサイト(オウンドメディア)
  • Web広告
  • SNS
  • ダイレクトメール

またMAツールでは、見込み顧客が特定の行動をした場合にアラート(通知)を送信し、インサイドセールスのアプローチにつなげることも可能です。

リードナーチャリングにおけるシナリオの作成例

ここでは、リードナーチャリングのシナリオの例を3つ紹介します。

【ケース1】資料ダウンロードを起点としたシナリオ

商品紹介やノウハウ情報に関する資料を請求・ダウンロードした見込み顧客に対するシナリオの例です。自社商品に対する興味があるものの、まだ検討レベルは低いことが想定される場合、理解を深めてもらうコンテンツを段階的に提供することが有効です。

<シナリオの例>

ステップ1:資料請求・ダウンロードの直後にお礼メールを配信する
ステップ2:お礼メールを配信した3日後に商品の導入事例を配信する
ステップ3:導入事例を開封した場合、その翌日に無料トライアルサービスの案内メールを配信する

【ケース2】料金ページへのアクセスを起点としたシナリオ

Webサイトの料金ページを閲覧した見込み顧客をナーチャリングするシナリオの例です。複数回のアクセスがある場合は自社商品の検討レベルが高まっている可能性があるため、機を逃さずに購入意欲をさらに高めるコンテンツを配信します。

<シナリオの例>

ステップ1:料金ページに2回以上アクセスがあった見込み顧客に、他社商品との比較資料を送付する
ステップ2:比較資料を開封した場合、割引キャンペーンの案内メールを配信する
ステップ3:キャンペーン案内を開封したらインサイドセールスに通知し、電話でアプローチを行う

【ケース3】セミナー参加者との関係性を高めるシナリオ

自社のセミナーやウェビナーに参加した見込み顧客に対し、継続的にアプローチを行うことで関係性を深めていくシナリオの例です。

<シナリオの例>

ステップ1:セミナー終了直後にお礼メールを配信する
ステップ2:翌日に、セミナー参加者限定の特別資料や割引プランを紹介するメールを配信する
ステップ3:3日後に、無料の個別オンライン面談の案内メールを配信する

お礼メールからWebアンケートに誘導し、回答内容に応じてアプローチを分岐させるのも一案です。また、欠席者にはウェビナーのスライド資料を配布してフォローアップを行うなど、参加者とは別のシナリオを用意するとよいでしょう。

【ケース4】休眠顧客に再度アプローチするシナリオ

過去に問い合わせや商談などの接点があったものの、一定期間アクションが途絶えている休眠顧客に対するシナリオの例です。休眠状態の見込み顧客に自社商品を思い出してもらい、前向きなアクションや再検討を促します。

<シナリオの例>

ステップ1:現在の検討状況を伺うメールを配信する(商品紹介や最新事例のURLを掲載)
ステップ2:メール内のURLをクリックした場合、翌日にセミナーの案内メールを配信する
ステップ3:セミナー案内メールを開封したらインサイドセールスに通知し、2日後に現在の課題やニーズについてヒアリングを行う

メールを開封したもののURLをクリックしなかった場合は、現状を確認するWebアンケートを送付し、課題やニーズに応じてコンテンツを出し分けるシナリオが考えられます。

シナリオの運用効果を高めるポイント

さいごに、リードナーチャリングのシナリオ運用を成功させるためのポイントを4つ紹介します。

【ポイント1】見込み顧客のペルソナを分析する

精度の高いナーチャリングを行うには、見込み顧客のペルソナを分析・設定し、顧客視点に立ってシナリオを作成することが重要です。ペルソナとは自社の商品・サービスを使用する「典型的な顧客像」のことで、BtoBの場合は「企業」と「人物(担当者や決裁者)」について設定します。

具体的には、以下のような項目について設定します。

企業ペルソナの項目例 人物ペルソナの項目例
・企業名
・業界・市場規模
・従業員数
・売上規模
・市場動向
・企業の状況・ポジション
・企業の目標・課題
・氏名
・所属部署
・役職
・業務内容・チーム内での役割
・決裁権の有無
・業務上の目標・課題
・業務上の行動特性・価値観

ペルソナは「こうであってほしい」という理想像ではなく、見込み顧客の実態に即したリアルな顧客像です。想像や思い込みで設定せず、既存の顧客情報やアンケートの回答データ、アクセス解析データなどを根拠に設定しましょう。

【ポイント2】カスタマージャーニーマップを作成する

カスタマージャーニーマップとは、顧客が購買に至るまでのプロセスを図表などで可視化したものです。見込み顧客のペルソナに基づいて、タッチポイントや行動・思考の変遷を時系列で整理することで、効果的なコンテンツやアプローチのタイミングを見極めやすくなります。

一般的なBtoBのカスタマージャーニーマップは、横軸に購買プロセスのフェーズを、縦軸にタッチポイントや顧客の思考、課題などを設定して作成します。

<横軸の項目例>

  • 認知
  • 情報収集
  • 比較検討
  • 稟議・承認
  • 決裁

<縦軸の項目例>

  • タッチポイント
  • 見込み顧客の行動
  • 顧客の思考・感情
  • 自社の施策

以下の記事も参考にしてください。

【テンプレート付き】BtoBカスタマージャーニーマップの作り方と失敗を防ぐコツ

【ポイント3】シンプルなシナリオから始める

MAツールでは複雑に分岐する高度なシナリオの運用も可能ですが、見込み顧客が多くない場合はシンプルなフローにすることをおすすめします。なぜなら、分岐点が多いとシナリオのゴールにたどり着く見込み顧客がおらず、優良リードを抽出できない状況に陥りやすいからです。

特に、BtoBはBtoCと比べて見込み顧客が少ないため、母数に見合ったシナリオを設計することが重要です。まずはスモールスタートで運用を始め、見込み顧客が増えてきた段階で分岐の追加やセグメントの細分化などを検討しましょう。

【ポイント4】シナリオは定期的に見直す

作成したシナリオは定期的に効果検証を行い、必要に応じてブラッシュアップすることが大切です。見込み顧客は当初のシナリオ通りに反応するとは限らず、コンテンツや配信タイミングなどに問題点が見つかる可能性があるからです。

また、見込み顧客を取り巻く環境やニーズは変化するため、シナリオが陳腐化することも考えられます。一度設計したシナリオにこだわり過ぎず、PDCAを回しながらシナリオを随時改善し、アプローチの精度を高めましょう。

シナリオを設定してリードナーチャリングの効果を高めよう

購買に至るまでのプロセスが長いBtoBでは、見込み顧客の状況に応じてシナリオを設定し、段階的にリードナーチャリングを進めることが効果的です。シナリオはMAツールで運用するのが一般的で、「誰に・いつ・何を・どのように」配信するのかを設定することでナーチャリング施策運用の自動化を実現できます。

精度の高いシナリオを作成するには、見込み顧客の情報を収集してペルソナやカスタマージャーニーを分析することが先決です。データに基づいたリアルな顧客像を想定することで、コンテンツや配信タイミング、チャネルを適切に設定しやすくなります。

ただし、複雑なシナリオを作成すると想定通りに運用できないことがあるため注意が必要です。見込み顧客が少ない段階ではシンプルなシナリオから始め、母数が増えてきたらフローを見直すことをおすすめします。

本記事で紹介したシナリオ設定・運用のポイントを参考に、効率的かつ効果的にリードナーチャリングを行いましょう。

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