リード獲得やナーチャリングに有効な施策として再注目されているDM(ダイレクトメール)。新たにDM施策に取り組む企業が増えていますが、「作り方がわからない」という声も聞かれます。本記事では、DM作成に必要な基本要素と作成手順を解説します。法人向けDMにおけるポイントも参考にしてください。
DM(ダイレクトメール)とは
DM(ダイレクトメール)とは、自社商材に関する印刷物(ハガキや冊子など)を顧客やターゲットに送付するマーケティング手法です。企業が顧客に直接コミュニケーションをとるダイレクトマーケティングの一種で、BtoC・BtoBを問わず幅広い企業で活用されています。
※広義ではダイレクトメールに電子メールを含める場合もありますが、本記事では区別しています。
BtoBにおけるDM施策のポイント
BtoB企業がDMを始める際は、BtoCのDMとの違いを知っておく必要があります。
BtoBとBtoCの大きな違いは、DMの受取手と決裁者(意思決定者)が異なることです。BtoCでは「DMの受取手=意思決定者かつ商品の主使用者」であるケースが多いため、本人のニーズや悩みに対応した商品・サービスの情報を直接訴求することができます。
一方BtoBでは、DMを受け取った担当者が商品購入の決裁権をもっているとは限らず、複数の部署が意思決定に関わるケースもあります。担当者にフォーカスしたDMを作成しても、決裁者に響かなければ却下されてしまうため、法人に送付するDMは担当者と決裁者の両方を意識して作成する必要があります。
DMを活用するメリット
近年はWebを介したオンライン施策が主流になっているため、オフラインのDMは時代遅れのイメージがあるかもしれません。しかし、DMには以下のようなメリットがあることから、集客や顧客との関係構築に有効な施策として改めて注目されています。
メリット①開封率・閲読率が高い
日本ダイレクトメール協会が2022年に実施した調査によると、DMの開封・閲読率は75.4%でした。メルマガの開封率が平均20%前後であることを考えると、高水準であることがわかります。なお、この調査は個人向けのDMが対象なので法人向けDMの開封率は不明ですが、直接手元に届けられるDMは開封・閲読されやすいと言えるでしょう。
メリット②回覧性が高い
DMは職場で回覧されやすいという特徴があります。自分宛てに届いたメルマガを転送することはあまりありませんが、DMであれば「上司に見せて話題にする」「DMの内容に興味がありそうな部署や担当者に渡す」といった行動が期待できます。
メリット③クリエイティブの自由度が高い
DMは情報量やクリエイティブの形式を自由に選ぶことができます。ハガキ形式が多いですが、伝えたい情報量に応じて圧着ハガキや封書形式にするなど、柔軟に対応することが可能です。イラストや画像などでデザインの工夫もしやすく、視覚的な訴求力を高めることもできます。
メリット④効果測定ができる
DMにはQRコードやクーポン、返信用ハガキなど、顧客の反応を受けとるためのレスポンスデバイスを同封するのが一般的です。レスポンスデバイスを用意することで、それらの利用状況から次のアクションにつながった割合や費用対効果を把握することが可能です。
DM(ダイレクトメール)の作成に必要な「3W1H」
DMで成果を上げるには、「3W1H」の4つの要素を検討しておくことが重要です。
<DMの基本要素>
- WHO(誰に):ターゲットは誰か
- WHAT(何を):オファーとして何を提示するか
- WHEN(いつ):どのタイミングで送付するのか
- HOW(どのように):どんな仕様にするか
各要素について詳しく見ていきましょう。
WHO(誰に):ターゲットは誰か
まず、DMを送付するターゲットを明確にします。DMに限ったことではありませんが、ターゲットが曖昧なままやみくもに施策を展開しても、期待する成果は望めません。特にDMは企業側からアプローチをするプッシュ型の施策であるため、明確なターゲット設定に基づいて実施しないと開封すらされないでしょう。
DMのターゲットは、属性や購買状況をもとに設定するのが一般的です。購買状況による分類例を以下に挙げます。
既存顧客 | すでに取引のある顧客。購入回数や購入金額をもとに「優良顧客」や「リピート顧客」などに細分化して展開する場合もある。 |
新規顧客 | 最近取引が始まったばかりの顧客。 |
見込み顧客 | まだ取引には至っていないものの、ニーズが顕在化している顧客。 |
潜在顧客 | まだ見込み顧客になっていないが、ニーズの掘り起こしにより将来的に取引が期待できる顧客。 |
ターゲットが明確になれば、そのターゲットの課題や興味関心をもとに訴求ポイントを絞り込むことができます。例えば、既存顧客に送付する場合は「新商品・サービスの紹介」や「リピーター限定キャンペーンの案内」などが想定されます。
DMの訴求内容を検討する際は、ターゲットのペルソナ分析を行うことがおすすめです。BtoBの場合、企業ペルソナと担当者ペルソナの2つを設定することで、訴求すべき内容がより明確になります。
WHAT(何を):オファーとして何を提示するか
次に、DMの受取手に対するオファー(offer)を決めます。オファーの本来の意味は「提示する/申し出る」などですが、マーケティングにおいては「次のアクション(セミナー参加や購入など)の動機づけとなる特典」を意味します。
DMにおけるオファーは「DMに応じた顧客に提供する特典」のことで、以下のような種類があります。
- 金銭的な優遇:割引、無料、キャッシュバックなど
- 決済に関する優遇:分割払いOK、複数の決済方法から選べるなど
- 保証に関する湯閏:返金・返品保証、保証期間の延長など
- プレゼント:新商品サンプル、オプションサービス、オリジナルノベルティなど
- 限定的な優遇:期間限定、初回限定、〇円以上購入した方のみ など
BtoBの場合、例えば「無料でお役立ち資料をプレゼント」「期間限定で個別セミナーにご招待」などのオファーを用意し、DMにQRコードを記載して申込みフォームへ誘導するといった方法が挙げられます。
オファーは個人を対象としたBtoCのほうが即効性がありますが、BtoBにおいても、顧客の状況によっては行動を後押しする大きな要因となります。
WHEN(いつ):どのタイミングで送付するのか
DMを送付するタイミングも重要な要素です。どんなに訴求内容が魅力的でも、タイミングが悪ければ行動を促すことは難しいでしょう。
送付タイミングは、ターゲットの状況やオファーの内容に合わせて決めるのが基本です。例えば新規顧客がターゲットの場合、「初回購入から10日後にお礼のDMを送付する」「新商品発売のタイミングで再購入やアップセルを促すDMを送付する」などが挙げられます。
DMの訴求力を高めるポイントは大きく2点です。
- ターゲットの関心やニーズが高まる時期をねらう
(季節の変わり目、ボーナスの時期、特別なイベント前など) - 他の情報に埋もれそうな時期は避ける
(年末年始や大型連休の直後など)
BtoBの場合、以下のようなタイミングを意識しましょう。
- 次期予算が確定する前に送付する
- 平日に届ける(月曜が読まれやすい)
- 忙しい月末月初は避ける
- 人事異動の時期は避ける
HOW(どのように):どんな仕様にするか
4つ目の要素は仕様です。DMの仕様は「ハガキ型」と「封書型」の2種類に大別され、情報量や訴求内容に応じて使い分ける必要があります。それぞれの特徴は下記の通りです。
ハガキ型 |
|
封書型 |
|
例えば、キャンペーンの告知や購入のお礼などはハガキ型、新商品・サービスの詳細な案内や特別なオファーがある場合は封書型が適しています。
ハガキや封書にも様々なサイズがあるため、予算を勘案しながら適切な仕様を選択しましょう。
DM(ダイレクトメール)の作成・実施手順とポイント
3W1Hを検討してアウトラインが決まったら、その内容に沿ってDMを作成・実施します。
手順は以下の通りです。
- 構成作成・ライティング
- デザイン
- 印刷・発送
- 効果測定
ひとつずつ見ていきましょう。
手順①構成作成・ライティング
まず、ターゲットに訴求する内容を整理した上で全体の構成を検討し、ライティングを行います。記載できるスペースを考慮して情報を盛り込み過ぎないように注意しましょう。
基本的に、DMは下記5つの要素で構成します。
①キャッチコピー
キャッチコピーは受取手の興味を惹くための重要な要素です。訴求する商品の特徴や得られるベネフィット(便益・効果)など、「DMに目を通してみよう」と思ってもらえる内容を簡潔に訴求しましょう。受取手に響くキャッチコピーであれば開封率・閲読率が向上します。
②ターゲットへの呼びかけ
冒頭から商品・サービスを紹介するのではなく、「自社(自分)のことだ」と自分事と捉えてもらえるような文言を記載します。
一例を以下に挙げます。
- 〇〇のご担当者様(責任者様)へ
- 〇〇についてお悩みの方へ
- 〇〇の業務を効率化したい方へ
- 〇〇の導入を検討している方へ
呼びかけに続いて、受取手が抱えているであろう課題やニーズの具体例を挙げる方法もあります。設定したターゲットの属性やペルソナをもとに、当事者意識につながる伝え方を検討しましょう。
③商品・サービスの説明
本題である商品・サービスの紹介は、ターゲットにとってのベネフィットを意識して記載します。テキストが多すぎると閲読率が下がるため、できる限り簡潔に伝えましょう。
またBtoBの場合は、担当者が上司に説明・提案しやすいよう、具体的な数値や実績を盛り込むなど信頼性が高まる情報を加えると効果的です。
④オファー(特典)
3W1Hで検討したオファーは、ターゲットの行動を促す重要な要素です。圧着ハガキや封書型の場合は、わかりやすい箇所に記載して開封を促しましょう。
⑤お問い合わせ先</h4>
メールアドレスや電話番号など、DMに関するお問い合わせ先を記載します。ランディングページ(LP)など特定のWebページへ誘導する場合は、QRコードも掲載しましょう。DMに興味をもってくれた人が迷わずに次のアクションを起こせるよう、わかりやすく記載することが重要です。
手順②デザイン</h3>
DMに記載する情報が決まったら、デザインを制作します。訴求力を高めるデザインのポイントは3つです。
①メリハリをつける
強調したい内容が目立つように、メリハリのあるデザインを意識しましょう。訴求内容に合ったイラストや画像を配置するのも効果的です。色を多用しすぎず、シンプルな配色にすると情報が伝わりやすくなります。
②目線の流れを意識してレイアウトする
ハガキやチラシなどの印刷物を見るときの目線は、アルファベットの「Z」のように左上→右上→左下→右下へと移動します。DMに盛り込む要素をレイアウトする際は、この流れを意識しましょう。
一例を以下に挙げます。
- 左上 :キャッチコピーやターゲットへの呼びかけ
- 右上~左下:オファーや商品説明
- 左下~右下:問い合わせ先やQRコード
目線の流れに沿って適切に情報を配置すれば、DMの内容をスムーズに把握することができます。
③アイキャッチを加える
情報量が多い場合、すべて文章で伝えようとすると読み手に負担を与えてしまうため、アイキャッチを活用します。アイキャッチは目に留まりやすいデザイン要素のことで、イラストや画像のほか、数字や矢印などがあります。例えば、サービスのメニューをただ羅列するのではなく、アイキャッチ的に数字やマークを配置すれば読み手は情報を整理しやすくなります。
手順③印刷・発送
DMの作成が完了したら、原稿を印刷して発送します。宛名印刷などの発送準備がスムーズに進むよう、あらかじめ送付リストを整理しておきましょう。
印刷から発送までの工程を外部業者に委託する場合、費用の目安は以下の通りです。
<1通あたり/1,000通発送する場合の目安>
- ハガキ(両面カラー):70円~
- 圧縮ハガキ :90円~
- 封書(200gまで) :80円~
- 封書(カタログ) :400円~
なお、発送数量が多いほど単価は安くなります。印刷・発送作業は手間がかかるため、代行業者を活用しましょう。
手順④効果測定
DMは発送して終わりではなく、成果を検証して施策を改善していくことが重要です。
DMの主な効果測定指標を以下にまとめました。
レスポンス率 | 送付したDMに顧客が反応した割合。レスポンスの内容は、問い合わせや資料請求、アンケートの回答などが挙げられる。
●レスポンス率=レスポンス数÷DM発送数×100 |
コンバージョン率 | 施策のゴールとして定めたコンバージョン(商品購入や成約など)を獲得した割合。
●コンバージョン率=コンバージョン数÷DM発送数×100 |
CPR(Cost Per Response) | 1件のレスポンスを獲得するために費やしたコスト(レスポンス獲得単価)のこと。CPRが低いほど効果的な施策であると評価できます。
●CPR=総DM費÷レスポンス件数 ●総DM費=制作費+印刷費+発送作業費+郵送費+インセンティブ費用 |
CPO(Cost Per Order) | 1件のコンバージョンを獲得するために費やしたコスト(顧客獲得単価)のこと。一般的に初回の購入・成約のみをカウントする。
●CPO=総DM費÷受注件数 |
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成果につながるDM(ダイレクトメール)を作成するには、「3W1H」の要素を明確にしておくことが重要です。DMのターゲットやオファーなどのアウトラインが固まれば、ライティングやデザインをスムーズに進めることができます。本記事で紹介した手順やポイントを参考に、顧客の行動を促すDMを作成しましょう。
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