「AIDMA」「AISAS」は、認知から購入に至る購買プロセスを整理した購買行動モデルです。時代とともに購買行動は変化を続けており、SNSやデジタル技術が生活の中に浸透している現在では新たな行動パターンも様々登場しています。本記事では最新の購買行動モデルも含めて、種類と活用方法を解説します。
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AIDMA(アイドマ)とは
AIDMA(アイドマ)とは、商品・サービスの認知から購買までのプロセスを5段階に分けたフレームワークのことです。購買行動モデルの基本形ともいえるもので、インターネットが普及する以前からマーケティング活動に多く用いられてきました。以下の頭文字をとっています。
- Attention:気づき
- Interest:興味
- Desire:欲求
- Memory:記憶
- Action:行動
大きくは、顧客が商品・サービスを認知するフェーズ→意識・感情の変容が起きるフェーズ→購入を決めるフェーズになっています。マス広告が主流だった時代に生まれたモデルのため「AIDMAの法則は古い」といわれることもありますが、その後に登場している購買行動モデルはAIDMAの考え方がベースとなっています。
マーケティングにおけるコミュニケーション設計の基本となるため、まずはAIDMAについて理解した上で他のモデルの特徴を押さえるようにするとよいでしょう。
AIDMAの各プロセスについて見ていきます。
Attention(気づき)
未認知から認知へと変わるフェーズです。マーケティングではマス広告やWeb広告などの各種広告をはじめ、近年ではSNSやオウンドメディア、動画サイトを通じた情報発信による認知獲得も多くなっています。
Interest(興味)
商品・サービスの認知から興味を持つフェーズへと変わります。マーケティング施策ではターゲットとする顧客の興味関心を得られることを意識し、商品・サービスの便益や特徴などの情報を提供します。具体例としてはメルマガやウェビナーといったオンライン施策のほか、DMや店頭POPなどオフラインの施策もあります。
Desire(欲求)
興味関心から購買意欲が高い状態へと移行するフェーズで、商品・サービスへの理解が深まり、活用イメージが具体的になっている状態です。マーケティング施策では試供品やクーポンの配布、無料トライアルなどがあります。
Memory(記憶)
自社の商品・サービスが記憶されるフェーズです。購買意欲が高まったとしても、すぐに購入に至るとは限りません。「必要なタイミングがきたら検討しよう」「他の商品と比較してから検討しよう」など、顧客が購入をいったん踏みとどまるケースは様々です。
マーケティング施策では、メルマガやSNS、Webサイトなどを活用して継続的に顧客接点を持つことが重要になります。とくにBtoBの場合は複数の関係者が決裁に関与するため、比較検討期間が長い傾向にあります。自社の商品・サービスが記憶に残るよう、施策を検討することが重要です。
Action(行動)
認知から意識・感情の変容を経て、購入に至るフェーズです。マーケティング施策では、顧客がスムーズに購入できるよう対策を講じます。たとえば、決済方法を複数用意する、Webサイトからの申込を最適化するEFO(入力フォーム最適化)などがあります。また、キャンペーンを実施するなどして、今購入すべききっかけを作り行動を促すようにします。
AISAS(アイサス)とは
AISAS(アイサス)とは、インターネット活用を前提とした購買行動モデルのことです。2000年代前半、インターネットの普及にともない購買行動が大きく変化したことを受け、電通によって提唱されました。以下の頭文字をとっています。
- Attention:気づき
- Interest:興味
- Search:検索
- Action:行動
- Share:共有
AIDMAとの違いは、Desire(欲求)とMemory(記憶)に代わり、Search(検索)とShare(共有)が加わっている点です。
興味関心を持ったらネットで検索して情報収集し、購入後は感想・評価を口コミやSNSなどで共有するプロセスになっています。インターネット時代の特徴であるSearch(検索)とShare(共有)について見ていきましょう。
Search(検索)
ネットで検索して様々な情報を収集するフェーズです。商品・サービスのスペックや価格といった詳細情報のほか、口コミ情報などを参考にしながら購入を検討します。マーケティングではターゲットとなる顧客層の行動傾向を分析して、タッチポイントを強化する施策が重要になります。
Share(共有)
購入した商品・サービスをSNSや口コミサイトでシェアします。口コミの内容が売上を大きく左右することからわかる通り、実際に購入・利用した顧客の評価は購入検討者にとって貴重な情報源です。マーケティング施策では、顧客体験を向上する取り組みが重要になります。
BtoBの場合は、導入事例記事が口コミ情報と同様の役割を果たします。自社と同規模・同業種、同じ課題を持っている企業などの事例が多数あると、見込客のリアクションが期待できます。
最新の購買行動モデル8つ
現在は、様々な角度から見た購買行動モデルが登場しています。代表的なフレームワークを8つピックアップして紹介します。
AMTUL(アムツール)
AMTUL(アムツール)は、AIDMAに長期的な視点を取り入れた購買行動モデルです。AIDMAは初回購入時のプロセスになっていますが、AMTULではリピート購入やブランド指名買いに至るまでの態度変容モデルである点が特徴です。
- Awareness:認知
- Memory:記憶
- Trial:試用
- Usage:本格利用、購入
- Loyalty:ブランド指名、リピート購入
まずは一度試してみたあとに本格利用に移行し、商品・サービスに満足すればリピート購入されてロイヤル顧客になっていくというプロセスです。とくに、継続購入が収益性に大きく影響する日用品や化粧品、アパレルなどのジャンル、サブスクリプションサービスで重要となるフレームワークです。
ブランド想起率を高めるための施策をはじめ、試用のきっかけづくり、リピート購入の促進、顧客体験の向上などが求められます。
AISCEAS(アイシーズ)
AISCEAS(アイシーズ)はAISASをより詳細にしたモデルで、Search(検索)とAction(行動)の間にComparison(比較))とExamination(検討)のプロセスが加わっています。
- Attention:気づき
- Interest:興味
- Search:検索
- Comparison:比較
- Examination:検討
- Action:行動
- Share:共有
現在は比較サイトや個人ブログなどの情報がネット上にあふれ、顧客は容易に複数の商品・サービスを比較・検討できるようになりました。しかし、見方を変えると、顧客にとっては上手に選ぶノウハウが必要になっていると捉えることもできます。
マーケティング活動では、自社商材のコンセプトや便益、競合商品との違いを明確に打ち出し、選ばれるための施策が重要になります。
DECAX(デキャックス)
DECAX(デキャックス)は、自社商材を発見してもらうところから始まり、顧客との関係を構築しながら購入につなげる購買行動モデルです。コンテンツを中心に顧客接点を持つことから、コンテンツマーケティング時代のモデルといわれています。
- Discovery:発見
- Engage:関係構築
- Check:確認
- Action:行動
- Experience:体験共有
Web広告やSEO記事、SNS、動画などのコンテンツを通じて商材を発見してもらい、メルマガやSNSなどで継続的に顧客接点を持ちながら関係構築を図ります。顧客は商材をCheck(確認)し、購入後は自身の体験をネット上でシェアするというプロセスです。
DECAXでは、顧客の信頼や共感を獲得するための良質なコンテンツ制作がポイントになります。リード獲得・育成や顧客ロイヤリティの向上が重視される現在、注目されているモデルです。
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VISAS(ヴィサス)
VISAS(ヴィサス)は、SNSや口コミといった個人の情報発信が購買行動に大きく影響を与えるようになったことから登場したモデルです。
- Viral:口コミ
- Influence:影響
- Sympathy:共感
- Action:行動
- Share:共有
SNSなどで商品・サービスを知り、ユーザーの利用体験から影響を受けて購入、自身もSNSや口コミで情報を発信するというプロセスです。SNSが商材の認知や共感醸成に大きな影響を与えることは周知の通りで、昨今はSNSマーケティングやインフルエンサーマーケティングに取り組む企業も多くなっています。
SIPS(シップス)
SIPS(シップス)は、SNSの普及にともない登場した購買行動モデルです。SNSを起点に、共感から始まり次のアクションにつながっていくプロセスになっています。SIPSの大きな特徴は、購入が必ずしもゴールとは限らない点です。
- Sympathize:共感
- Identify:確認
- Participate:参加
- Share & Spread:共有・拡散
SNSで商材に共感したら、ネットなどで情報を確認します。購入に至らない場合であっても「いいね」やリツイート、あるいはイベントやコミュニティに参加し、情報の共有・拡散を行います。売上の観点だけでなく、知名度やブランド力の向上を図りたい場合にうまく活用したいフレームワークです。
ULSSAS(ウルサス)
ULSSAS(ウルサス)は、ユーザーの投稿を起点とする購買行動モデルです。特徴は、2種類のSearch(検索)を経ることです。まずSNSで情報を得た後に、Googleなどの検索エンジンで情報収集するユーザーが多い点に着目したモデルになっています。
- User Generated Contents:ユーザー投稿コンテンツ
- Like:いいね!
- Search1:SNS検索
- Search2:Googleなどの検索エンジンから検索
- Action:購入
- Spread:拡散
ユーザーの投稿に「いいね!」とリアクションした後にSNSでリアルな情報を集め、Googleなどで詳細を調べて購入します。購入者自身も投稿を行い、「いいね!」が増えることで好循環が生まれるというモデルです。
SNSが生活の中に浸透している昨今、SNSを起点とした様々な購買行動モデルが登場しています。それぞれに着目している点が異なるため、自社の状況に応じて使い分けるとよいでしょう。
RsEsPs(レップス)
RsEsPs(レップス)とは、認識→体験→購買の3つのプロセスに、それぞれ検索・共有・拡散がある購買行動モデルです。インターネットやSNSが当たり前に利用されている時代の購買プロセスを簡潔に整理しています。
- Recognition:認識
→Search・Spread・Share:検索・共有・拡散 - Experience:体験
→Search・Spread・Share:検索・共有・拡散 - Purchase:購買
→Search・Spread・Share:検索・共有・拡散
検索・共有・拡散は、商品・サービスの認識フェーズ、体験フェーズ、購入フェーズのそれぞれで行われます。マーケティングでは、いかに検索・共有・拡散をしてもらえるかを念頭に置きながら施策を検討することがポイントとなります。
ASICA(アシカ)
ASICA(アシカ)は、BtoBに特化した購買行動モデルです。BtoBでは立場の異なる複数名の関係者が購買に関与することが多いため、合理的な判断に至るプロセスに着目しています。
- Assignment:課題
- Solution:解決
- Inspection:検証
- Consent:承認
- Action:行動
企業は自社の課題を認識すると、解決方法を探します。解決策の有効性や費用対効果などを検証し、社内の承認を得たあとに購買・成約に至ります。
マーケティング活動ではターゲット企業の課題を的確に把握するとともに、自社商材の有効性や競合他社との違いを明確にすることが重要です。また、意外にボトルネックになることが多いのは承認フェーズです。窓口の担当者には商材のメリットが伝わっていても、決裁者が商材についての知識がないため承認を得られないというケースがあります。
こうした事態に陥らないようにするには、担当者が稟議書作成やプレゼンに使える営業資料、導入事例などを提供するという方法があります。担当者との関係性構築にも役立つので、検討してみるとよいでしょう。
購買行動モデルの活用方法
購買行動モデルはどのような場面に活かされるのか、活用方法について見ていきましょう。
ペルソナ作成
ペルソナは、自社がターゲットとする顧客像を明確にする上で有効な手法です。ペルソナを作成するときは属性情報だけでなく、ライフスタイルや悩み、よく利用する情報収集の方法などを設定し、あたかも実在する人物であるかのように組み立てることがポイントになります。
購買行動モデルを参考にすることでペルソナの購買ストーリーがつかみやすくなり、マーケティング施策に活かせるペルソナを作成できます。
マーケティング施策の検討
マーケティング施策で思うような成果が出ていない場合、購買行動モデルを参考にしながら自社がフォローできていない部分を洗い出して改善するという方法があります。
たとえば、リード獲得に課題がある場合は、DECAXモデルを参考にコンテンツ設計を見直すとよいでしょう。SNSマーケティングを行いたい場合は、VISASやSIPS、ULSSASのモデルが参考になります。自社の課題やターゲットに応じて購買行動モデルを使い分けましょう。
KPI設定
購買行動モデルの各プロセスは、マーケティング目標を達成するための要所となるものです。自社の戦略に合っている購買行動モデルを参考にすれば、それぞれのプロセスにおいてどのようなKPIを設定すればよいのかが明確になり、抜け漏れのない施策が可能になります。
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ライフスタイルやニーズが多様化している現在、AIDMA、AISASをはじめとする購買行動モデルを理解していると、マーケティング戦略の方向性を定める上で役立ちます。とくに最新の購買行動モデルでは、ネットやSNSを活用した検索・比較・共有における施策やコンテンツマーケティング、顧客体験の向上が重要となっています。「購入してもらったら終わり」ではないことに留意しながら取り組んでいくことが必要です。
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