マーケティングのKPIは、事業目標を達成するために重要なプロセスと数値を明確にしたものです。本記事ではKPIとKGI・KSFの関係性を説明するとともに、マーケティングで多く用いられているKPIの種類・指標設定の考え方、運用のポイント・注意点まで解説します。
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KPIとは
「KPI(Key Performance Indicator)」は、日本語で重要業績評価指標と訳されます。事業目標を達成するために必要なプロセスと数値を定め、その達成状況を定量的に可視化するものです。
Webマーケティングの例を挙げると、WebサイトからのCV(コンバージョン)を目標としている場合、これを達成するにはどれくらいの流入数が必要かを決め、施策による流入数の達成状況を確認しながら業務を遂行します。
上記例でいう「目標を達成するために必要な流入数」がKPIで、日々のマーケティング活動の中で追いかける指標となります。
KPIとKGIの関係
KPIを理解する上で覚えておきたいのが「KGI(Key Goal Indicator)」です。KGIは日本語で重要目標達成指標または経営目標達成指標と訳され、事業の最終ゴールとなる目標数値のことをいいます。売上や利益、成約数などが代表的なKGIです。
KGIが事業活動による結果を見る指標であるのに対し、KPIはKGIを達成するために必要なプロセスが適切に遂行されているかを評価する指標です。したがって、事業の最終目標であるKGIを達成するためには、どのようなKPIを設定すべきかを見極めることが非常に重要になります。
言い換えると、KPIが達成されればKGIも達成される構図をロジカルに設計する必要があるということです。KPIを達成してもKGIの達成につながらないのであれば、設定したKPIが適切でないということになります。この点はKPI設計において極めて重要となるため、しっかり理解しておきましょう。
KPIとKSFの関係
KPIを設定する上で覚えておきたいもう一つの用語が「KSF(Key Success Factor)」です。KSFは重要成功要因と訳され、事業目標であるKGIを達成するための鍵となる要因のことをいいます。たとえば、KGIが売上前年比30%増で、KGIを達成するためのKSFを新規顧客獲得と置いた場合、これを実現するためのKPIとして流入数や問い合わせ件数などを設定します。
KGI・KSF・KPIの関係を見るとわかる通り、最終目標であるKGIの達成に直結する要因となるKSFを特定することで、設定すべきKPIの方向性をつかみやすくなります。そのため、KPIを設定するときは「KGI設定→KSFの特定→KPI設定」の順に進め、それぞれの関係性において矛盾がないかどうかを精査することが重要です。
BtoBマーケティングにおけるKGI・KPIとは
事業全体のKGIを達成するためにマーケティング部門が果たす役割は、リード(見込客)の獲得と育成が中心となっていることが多いでしょう。そのため、事業という視点からいうと、マーケティング部門のKPIはリード獲得数・商談化率・案件化率などが設定されます。
これらのKPIがマーケティング部門におけるKGI(目標)となり、これを達成するために必要なKPIを設定することになります。たとえば、リード獲得数がマーケティング部門のKGIとなる場合、これを達成するための手段にはWebサイト運営やWeb広告などがあり、PV(ページビュー)やCVR(コンバージョン率)などがKPIとなります。
この点を踏まえて、次項よりBtoBで重要となっているWebマーケティングのKPIについて詳しく見ていきます。
Webマーケティングで使われるKPIの種類・目標設定の考え方
Webマーケティングで多く用いられているKPIと目標設定の考え方について見ていきましょう。
PV(ページビュー)
PVとは、一定期間内にWebサイトのページが表示された回数のことです。集客状況を把握するための基本となる指標です。どのページがどれくらい閲覧されているのかを計測することで、ユーザーが興味・関心を抱いている対象やニーズを推測することもできます。
PVを増やすには、SEOやWeb広告、SNSなどを活用して集客するほか、サイト内の回遊を増やすなど様々な方法があります。
目標設定の考え方
PVの目標設定では、1件のCV(コンバージョン)を獲得するために必要なPVを算出して目標値を割り出すという方法があります。
たとえば、CVを1件獲得するには10件の問い合わせが必要であり、1件の問い合わせを獲得するためには100PV必要とした場合、1件のCVを獲得するには「10×100」で1000PVが必要となります。目標とするCVが100件の場合は、100×1000=10万PVが目標数値の目安という計算です。
このほかにも、業界平均値やベンチマーク企業の平均値などを参考にして目標を決めるという考え方もあります。
UU(ユニークユーザー)
UUとは、一定期間内にWebサイトを訪問したユーザー数のことです。同じユーザーは「1」とカウントする(同一端末の場合)ため、純粋なユーザー数を把握することができます。自社のWebサイトの人気度を測る指標といえます。
PVが多くてもUU数が伸びない場合は集客がうまくいっていないと見ることができるため、集客対策を検討する必要があります。逆にUU数が多くてもPVが伸びない場合、再訪されていない、またはサイト内を回遊されていないことなどが想定されるので、Webサイトの課題を特定して改善することが必要です。
目標設定の考え方
UUの目標設定は、CVとCVRから逆算して割り出すという方法があります。
たとえば、目標となるCVが100万円で単価が1万円、CVRが2%の場合、必要な販売数は「100万円÷1万円=100個」、1個あたりの販売に必要なUU数は「1個÷2%=50人」となり、100万円のCVを達成するには「100個×50人」で5000UUが必要という計算です。
セッション数
セッション数とは、ユーザーがWebサイトを訪問してから離脱するまでの行動単位のことです。訪問回数と呼ぶこともあります。
PVはページ表示回数をカウントしますが、セッション数では一定時間内においてサイト内の複数ページを閲覧していても「1」とカウントします。また、同じユーザーが1日に2回Webサイトを訪問した場合、UUは「1」、セッション数は「2」となります。Webサイトの集客力を把握する上で役立つ指標の一つです。
セッション数はユーザーが最初にアクセスしたページにカウントされ、直帰率・離脱率・回遊率・CVR(コンバージョン率)を算出する際にも用います。
目標設定の考え方
「CV=セッション数×CVR×客単価」となるので、この計算式をもとに割り出せば目標となるCVを達成するために必要なセッション数の目安を出すことができます。
CVR(コンバージョン率)
CVとは、ユーザーが自社の目標とするアクションをすることをいいます。マーケティングでは購入・申込・問い合わせ・資料請求・会員登録などをCVとすることが多く、KGIに応じて設定します。
PVやセッション数が多くても、CVRが低ければKGIの達成が難しくなるため非常に重要な指標です。PVは多いもののCVRが低いという場合は、コンテンツを見直してCVにつながりやすいユーザーを多く集める、Webサイトの導線を見直す、ユーザーが情報を登録する入力フォームのストレスを減らすなどの施策を検討する必要があります。
目標設定の考え方
CVRの出し方は様々な考え方があり、セッション数から割り出す方法のほか、UUやPVをもとに算出する場合もあります。計算式は「CVR=CV数÷(セッション数 or UU or PV)」です。
一般的には、BtoBでCVを資料請求や問い合わせ件数としている場合はセッション数やPV数、BtoCでCVをECサイトからの購入などにしている場合はUUとするケースが多くなっています。ただし、Webサイトに期待している成果によっても変わるため、どの割合を算出すべきかをしっかり検討する必要があります。
回遊率・直帰率・離脱率
回遊率とは、1ユーザーが1回の訪問で見ている平均ページ数のことです。回遊率が高いということは、ユーザーがWebサイトに興味を持っている、または評価が高いと判断できます。逆に回遊率が低い場合は、コンテンツの魅力化や導線の見直しなどが必要です。
直帰率とは、Webサイトにアクセスしたユーザーが最初の1ページを閲覧したのみで離脱している割合のことです。サイト内の回遊につながっている場合は直帰率が低くなりますが、一方で申込ページなどアクションを完結するページは直帰率が高くなるため、一概に判断できない点に注意が必要です。
離脱率とは、1セッションにおいて、どのページの閲覧を最後に離脱しているのか、割合を算出したものです。ユーザーが離脱する要因を特定して改善施策を検討する必要があります。とくに入力フォームのページで離脱率が高い場合は、CVを妨げる要因が潜んでいるため要注意です。
目標設定の考え方
回遊率は「PV÷セッション数」で算出できます。直帰率は「直帰数÷セッション数」、離脱率は「該当ページの離脱数÷該当ページのPV数」という計算式です。
目標を設定する際は、それぞれの数値がどれくらい改善されればKGIを達成できるのかを算出するとよいでしょう。
たとえば、ランディングページの直帰率を〇%改善して回遊率を〇%高め、入力フォームページでの離脱率を〇%まで改善するとCVを達成するというように考えていきます。または、同業種の平均値を調べて参考にするという方法もあります。
SNSのエンゲージメント率
SNSのエンゲージメント率とは、投稿を見たユーザーの中でどれくらいの人が反応してくれているのか、割合を出したものです。
たとえば、「いいね」の数やリプライ、リツイート、シェア、リンクのクリックといった行動からエンゲージメント率を測ります。SNSのアカウント画面から数値を確認することができます。BtoCはもちろん、BtoBにおいてもSNS運用は有効な施策となっているため、指標に加えるケースが多くなっています。
目標設定の考え方
全体としてエンゲージメント率を〇%まで上昇させるという考え方があるほか、リンクのクリック率を〇%アップするという目標設定の方法があります。
その他のKPI
ここまで紹介した以外にも、Webマーケティングでは様々なKPIが用いられています。以下に一例を挙げます。
- 滞在時間:ユーザーがWebサイトのページに滞在していた時間
- CTR(クリック率):Webサイトやメルマガ内に設置したリンク先をクリックした割合
- CPA(顧客獲得単価):1CVを獲得するためにかかったコスト
- リピート率:一定期間に2回以上の購入をしているユーザーの割合
- 解約率:定期購入やサブスクリプションにおいて解約された割合
マーケティング施策別:KPIの例
ここではリード創出からリード育成におけるマーケティングの施策例と、代表的なKPIの例を見ていきます。あくまでも参考例なので、実際には自社の状況を踏まえて適切なKPIを検討してください。
施策例 | KPI例 |
Webサイト・コンテンツマーケティング
|
・PV ・UU ・セッション数 ・回遊率・直帰率・離脱率 ・滞在時間 ・CVR(購入、会員登録、資料請求、問い合わせに至った割合など) |
Web広告 | ・CPA ・CTR ・CVR(購入、会員登録、資料請求、問い合わせに至った割合など) |
SNS | ・エンゲージメント率 ・フォロワー数 |
メールマーケティング | ・開封率 ・メルマガ内に設置したリンク先へのCTR ・CVR(購入、会員登録、資料請求、問い合わせに至った割合など) ・配信解除率 |
ウェビナー・展示会 | ・参加申込者数 ・CVR(購入、会員登録、資料請求、問い合わせに至った割合など) |
KPIを設定・運用するときのポイントと注意点
KPIを設定・運用する際のポイントと注意点を以下に整理しました。
計測可能な指標を設定する
KPIは数値として定量的に測定できるものを設定する必要があります。また、「CVRを上げる」というような曖昧な指標ではなく、「Web広告によるCVRを3%」というように、誰が見ても認識がぶれないよう明確に設定します。
期間内に実現可能な指標を設定する
KPIを設定する際は、目標数値が現実的に達成可能かどうかを検討する必要があります。たとえば、前月までの成長率が+ 10%という中で、実現可能な根拠がないまま前年比200%の数値を置いてしまうと、達成が難しいだけでなくメンバーのモチベーション低下を招いてしまうため注意が必要です。
そもそもKGI自体が根拠のない非現実的な数値になっている場合は、再検討することも必要です。
測定スピードを意識する
KPIはKGIを達成するための中間的な指標となるため、日単位・週単位など、できるだけ短サイクルで数値の変化を確認しながらPDCAを回していく必要があります。測定に手間取るようなKPIを設定してしまうと、スピーディに対応できなくなるため注意しましょう。デジタルツールを活用するなどの工夫も大切です。
KGIに貢献できているか確認する
KPIを設定するときは、KPIの目標値を全て達成すればKGIの達成につながるようにロジックを組み立てます。とはいえ、過去のデータなどをもとに仮説によって組み立てていくことになるため、実際にKPIとKGIが強く相関しているかどうか、目標値の整合性があるかどうかは、運用する中で確認する必要があります。
また、市場や競合動向は常に変化しているため、優先順位を変えたほうがよいケースなども出てきます。そのため、定期的に現在のKPIが適切かどうかを検証し、スピーディに対応していくことも重要です。
適切なKPIを設定して期待通りの成果につなげることが重要
KPIを設定することで取り組むべきことが明確になり、事業目標の達成につなげやすくなります。また、各メンバーが期待通りのパフォーマンスを上げられるようになるというメリットもあります。マーケティングでは様々な施策を同時に実施するケースが多いため、それぞれの施策による成果をできるだけ早くキャッチして、PDCAの精度を高めていくことも重要です。
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