マーケティング活動を自動化・効率化できるツールとして注目が高まっているMA(マーケティングオートメーション)。導入を検討する企業が増えていますが、MAツールを適切に運用するには様々な事前準備が必要となります。本記事では、MAツールを導入する流れと運用に失敗しないポイントを解説します。
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MAツールを導入する流れ ~事前準備から設定・運用まで~
MA(マーケティングオートメーション)とは、見込み顧客(リード)の獲得・育成・選別といった一連のマーケティング活動の自動化を実現するツールです。マーケティング・営業の業務を効率化できるうえ、顧客の特性やニーズに応じたOne to oneのアプローチが可能になるため、マーケティングの精度を高めるうえで必須とも言えるツールです。
ただし、MAツールは単に導入しただけで効果を発揮するものではありません。運用を成功させるには様々な事前準備を行う必要があり、一般的には導入まで3~6ヶ月程度を要します。
まずは、MAツールを導入する際の基本的な流れを見ていきましょう。
導入前の準備
必要な準備は大きく4つあります。
導入準備①導入目的・運用計画の明確化
まず、自社のマーケティング活動における課題を整理し、MAツール導入の目的を明確化します。よくある課題の一例を以下に挙げます。
- 顧客情報が各部署に散在しており有効活用できていない
- 顧客の興味関心に合った情報提供ができていない
- マーケティング部から営業に引き渡されるリードの質が低い
課題を洗い出したら、「MAツールをどのように運用し、どんな目標を達成したいのか」といった運用計画を立案します。目標は「資料請求件数を10件→20件に増やす」「商談化率を20%→30%に増やす」など具体的に設定することが重要です。
導入準備②既存の顧客データの整理
次に、社内に蓄積されている見込み顧客データを収集・整理します。具体的には以下のようなデータです。
- 部署単位で管理している顧客リスト
- セミナーの参加者データ
- 社内システムに格納されている顧客データ
- 営業担当者が個別に保有している名刺
これらを集約し、情報の抜け漏れや重複、誤記などを修正するデータクレンジングを行ったうえで一元化します。データクレンジングはマンパワーを要するため、データ量が多い場合は専門業者に委託するのも一案です。
導入準備③カスタマージャーニーマップの作成
MAツールを効果的に運用するために欠かせないのがカスタマージャーニーマップです。カスタマージャーニーマップは、顧客が商品・サービスを認知してから購入に至るまでのプロセスや思考・感情の変遷を時系列で図式化したもので、MAツールの運用フローや施策内容・シナリオを検討するベースとなります。
カスタマージャーニーマップは下記手順で作成します。
- 自社商品の典型的なユーザー像(ペルソナ)を設定する
- ペルソナの行動プロセスをフェーズ(認知・興味・検討・購入など)に区分する
- 各フェーズにおける顧客との接点(タッチポイント)を明確にする
- ペルソナの思考や感情を記入する
以下の記事も参考にしてください。
【テンプレート付き】BtoBカスタマージャーニーマップの作り方と失敗を防ぐコツ
導入準備④コンテンツの準備
カスタマージャーニーに沿って発信するコンテンツを制作します。
<コンテンツの例>
- オウンドメディア記事、ブログ記事
- ランディングページ(LP)
- セミナー
- ホワイトペーパー
- 製品紹介資料、パンフレット
- 導入事例
- 他社比較資料
- デモンストレーション動画
「どのフェーズで、どのような情報ニーズが高いのか」という観点で必要なコンテンツを策定しましょう。
導入準備⑤MAツールの選定
MA運用のフレームワークが決まったらツールを選定します。MAツールにはBtoC向け・BtoB向けがあり、備わっている機能も製品によって異なるため、自社の業態や運用計画に合った仕様のものを選ぶことが大切です。
主な選定ポイントを以下に挙げます。
- 自社に必要な機能が備わっているか
- 価格は予算に合っているか
- 自社で使いこなせるか
- 適切なサポートが受けられるか
- 自社と類似した企業が導入しているか
MAツールの選定方法の詳細は以下の記事を参考にしてください。
【BtoB向け】MAツールの選び方|比較選定のポイントとおすすめツール7選
MAツールの導入
MAツールの運用を始めるまでの手順は大きく3段階あります。
STEP1:導入・初期設定
選定したツールのベンダーと契約し、実際にMAツールを導入します。クラウド型の場合はアカウント発行後すぐに利用を開始できますが、オンプレミス型の場合はソフトウェアのインストール等が必要です。
ツールのセットアップが完了したら、MAの運用を始めるための初期設定を行います。必要な設定項目はツールによりますが、主にWebサイト上の行動を追跡・分析できるようにするためのトラッキングコードの設置や、他システムとの連携設定などがあります。
STEP2:顧客データの登録
事前に整理しておいた見込み顧客のデータをMAツールに登録します。一般的には2パターンの登録方法が用意されています。
- CSVファイルなどをアップロードして一括登録
- 一件ごとに入力・登録する
MAツールの運用にあたってデータ登録は必須ではありませんが、自社の情報資産を余すことなく活用するためにも、MA導入を機に顧客データを一元化することをおすすめします。
STEP3:施策の運用設定
MAツールの運用計画や施策内容に従って、個別の設定を行います。MAツールでは、セグメント機能やスコアリング機能で見込み顧客を分類し、それをもとにシナリオを設定することで「どのような属性・検討レベルの顧客に、どのタイミングで、どんなコンテンツを配信するのか」を明確にできます。
具体的には、以下のような施策を自動的に実行できるようになります。
- メルマガを開封した翌日に、製品の活用方法に関する説明資料を送付する
- サービスサイトでホワイトペーパーをダウンロードした3日後に、個別セミナーの案内を送付する
- ウェビナーに参加した2日後に、アポイント打診のメールを配信する
運用スタート・効果検証
各種設定が完了したら、いよいよMAツールの運用が始まります。設定内容に基づいて施策が実行され、見込み顧客のデータが随時収集・蓄積されます。データがある程度溜まった段階で効果を検証し、必要に応じて施策内容や運用方法を見直しましょう。
MAツールの導入・運用でよくある失敗例4つ
MAツールを導入して成果アップに成功した企業は多くありますが、一方で「導入したものの使いこなせていない」「運用が回らず放置されている」などと失敗に至るケースも少なくありません。
ここでは、MAツールの導入・運用でよくある失敗例4つと対策方法をご紹介します。
失敗例①多機能で使いこなせない
MAツール運用の失敗例として目立つのが、「機能が多すぎて使いこなせない」と諦めてしまうケースです。MAツールには、見込み顧客を精緻に細分化したうえできめ細やかな施策展開を実行できるよう、多彩な機能が備わっています。マーケティングの知識がなければ使いこなすことが難しい機能もあるため、マーケティングリテラシーが不足していると失敗に至る可能性が高いです。また、扱いに不慣れな段階で複雑な施策を運用しようとして、結局頓挫してしまうケースも見受けられます。
有効な対策は以下です。
<対策例>
- ベンダーの運用サポートが充実したツールを選ぶ
- 導入前にデモンストレーション機能や無料版を試す
- スモールスタートで少しずつノウハウを蓄積する
失敗例②運用人材が不足している
先述の通り、MAツールを運用するには様々な準備を行う必要があります。「運用計画を立案してカスタマージャーニーマップやコンテンツを作成し、運用シナリオを設定する」といった一連の業務を行うには多くの時間・労力を要するため、一般的にはMAツール運用の専任担当者を配置します。
しかし、日本の企業にはマーケティングの専任担当者を配置しておらず、知見のない他部門の人材がMAツール運用を兼務するケースも少なくありません。片手間では戦略設計から効果測定・施策改善までスピーディかつ一貫したPDCAを回すことは難しく、MAツールの導入効果も低水準に留まってしまいます。
<対策例>
- 配置転換や新規採用でマーケティングを担える人材を確保する
- MAツール導入・運用をサポートしてもらえる外部の人材サービスなどを活用する
失敗例③保有するリードが少ない
自社で保有する見込み顧客(リード)が少ないために、思うような成果を上げられないケースもあります。MAツールは、リードを育成(ナーチャリング)したうえで受注確度の高いリードを抽出することを主な目的としているため、一定以上の母数がなければまとまったアプローチ先を創出することができません。
例えば、メール開封率は一般的に10%前後なので、保有するリードが100~200件程度だとアプローチできるリードは10件程度に留まってしまうのです。リードが少ない場合は、まずは母数を増やす取り組みを強化しましょう。
<対策例>
- 社内の顧客データを洗い出して顧客リストを充実化する
- 集客施策を強化する(広告、SEO、セミナーなど)
失敗例④コンテンツの量・質が不十分
MAツールでうまくシナリオを設定できたとしても、肝心のコンテンツの内容がニーズに合っていなかったり、制作が追い付かずコンテンツが不足していたりすると、リードナーチャリングを適切に行うことができません。MAツール運用の効果を高めるには、見込み顧客のニーズや検討段階に応じてコンテンツの量・質を充実化させることが重要です。企画・制作・分析のPDCAを回す体制を整えたうえで、施策内容を見直しましょう。
<対策例>
- コンテンツ制作に必要な人的リソースを確保する
- コンテンツ制作のノウハウがある外部業者に委託する
MAツールをスムーズに運用するポイント
最後に、MAツール運用をスムーズにするためのポイントを2つご紹介します。
役割分担が明確な運用体制を構築する
MAツールを適切に運用するには、様々な部門・担当者が密に連携する必要があります。それぞれの役割分担が明確でないと混乱をきたす可能性があるため、「誰が・何を担うのか」を明確にして運用体制を構築することが重要です。
適切な運用体制は施策の規模などで変わってきますが、以下に一例を挙げます。
<MAツールの運用体制・役割分担の例>
運用統括責任者 | 戦略設計や施策全体の運用管理を統括する |
運用担当者 | 運用計画に基づいてスコアリングやシナリオなどを設計する |
システム設定担当者 | 施策内容に応じたプログラムの設定・管理や、SFA/CRMとの連携、メルマガの配信設定やフォーム作成などを担う |
マーケター | オンライン・オフラインのマーケティング施策を実施して認知拡大やリード獲得を図る 例:Web広告、SEO、メルマガ、セミナー、展示会など |
インサイドセールス | テレアポやメールでリードを育成してアポイントを獲得する |
コンテンツ制作チーム | MAツール運用に必要な各種コンテンツの企画・制作を担う。制作を統括するマネージャーを軸に、進行管理を行うディレクター、ライター、デザイナーなどで構成する |
データ解析担当者 | 各施策のデータを解析して効果測定を行う |
一連の運用プロセスを踏まえてそれぞれの担当業務や責任の範囲を明確にし、シームレスに運用できる体制を整えましょう。
運用方針について社内のコンセンサスをとっておく
MAツールの運用主体はマーケティング部門が担うことが多いですが、見込み顧客のスコアリングやシナリオの設計などを独断で進めるのはNGです。例えば、「どのような見込み顧客をホットリードとして営業に受け渡すか」といった点について営業部門の理解が得られていないと、認識の相違から対応が後回しにされる可能性があるからです。
また、運用方針について関連部門とコンセンサスがとれていないと、「マーケティング部から受け渡されるリードの質が低い」「営業の対応が遅くて失注した」など責任の押し付け合いも懸念されます。
そのような事態を防ぐためにも、MAツールの運用方針については関連部門と意見交換しながら設計し、スコアリングやホットリードの定義について認識を合わせておきましょう。
MAツールを適切に導入・運用して成果を高めよう
MAツールの運用効果を高めるには、導入前の準備を抜かりなく行うことが重要です。まずは、マーケティングや営業における課題を洗い出して目標・運用計画を明確にし、カスタマージャーニーマップでタッチポイントごとの情報ニーズを可視化しましょう。
また、MAツールは多機能なものが多いうえ、様々な関連部門を巻き込みながら運用の仕組みを作る必要があります。リソースやノウハウが不足している企業にとって高度なMAツール運用はハードルが高いため、スモールスタートや外部リソースを活用するなどしてノウハウを蓄積することをおすすめします。
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