さまざまな業界・企業でオウンドメディアの立ち上げが進んでいます。自社でオウンドメディアの運用を検討している担当者の方も多いでしょう。本記事ではオウンドメディアの企画立案フローやオウンドメディアの企画を社内稟議で通過させるための企画書作成のポイント、企画・アイディア出しのコツを紹介します。「オウンドメディアを運用したいが企画の立て方が分からない」「企画書作成のコツを知りたい」と悩んでいる方はぜひ参考にしてみてください。
オウンドメディアとは
オウンドメディア(Owned Media)とは、企業が自社で保有し運営するメディア全般を指します。広義では、自社の公式サイトやブログから、ECサイト、パンフレット、カタログなどもオウンドメディアに含まれます。ただ、Webマーケティング分野に限定すると、オウンドメディアとは主に企業が自社で運用するWebメディアのコラム記事や解説記事、商品・サービスの情報をまとめたランディングページを指します。
オウンドメディアではメディア構築やコンテンツ作成にリソース・コストが必要ですが、CMやWeb広告、SNS、口コミによる発信と異なり、一度作成したコンテンツは蓄積し資産として保有しておくことができます。また、自社の公式HPとは異なる情報を発信でき、発信する内容自体のコントロールが可能なこともオウンドメディアの利点です。
オウンドメディア企画立案のフロー
オウンドメディアの企画立案をする際のフローを4ステップに分けて説明します。
ステップ①:オウンドメディアの目的を明らかにする
オウンドメディアの企画にあたっては、なぜオウンドメディアを立ち上げるのか、なぜ運用を行うのか、その目的を明確に定めておく必要があります。
オウンドメディア設立の目的には以下の5つが挙げられます。
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リード獲得
オウンドメディア運用の目的として多いのが、将来顧客となる見込み客を見つけ出す『リード獲得』です。商品・サービスの購入を検討している消費者が検索するキーワードで記事などのコンテンツを制作することによって、自社との接点を増やし、見込み顧客の購入確度を高めることができます。オウンドメディア経由で、見込み顧客から問い合わせや資料請求が行われれば、氏名や連絡先など営業活動に役立つ情報も取得できます。
認知拡大
オウンドメディア運用は、自社や自社の商品・サービスの存在を知らない消費者への認知拡大にも役立ちます。社名や商品・サービス自体の認知度が低ければ、社名や商品名で検索し自社のHPに訪れる消費者はほとんどいません。こうした場合、非認知層にリーチし自社の商品・サービスを知ってもらうための手段として効果的なのがオウンドメディアです。
たとえば「○○の選び方」「○○の使い方」「○○の方法」など、消費者が興味を持ちそうなコンテンツや、悩み・課題を解決できるコンテンツをオウンドメディアで発信することで消費者に自社や自社の商品・サービスを知ってもらきっかけを作ることができます。
ブランディング
ブランディングとは自社の商品・ブランドの価値を高め、他社との差別化を図るマーケティング戦略です。オウンドメディアでは、情報の発信内容や発信の仕方を自社でコントロールできるため、自社のブランディング施策にも向いています。オウンドメディアを自社の価値観やコンセプト、強みを表現する場として利用すれば、自社が印象づけたいブランドイメージを消費者に発信し続けることができます。
人材獲得
企業が優秀な人材を獲得するため、オウンドメディアを活用するケースもあります。自社や自社の商品に関するコンテンツを制作・発信することで、企業のビジョンやメッセージに共感する応募者を集めることができます。人材獲得を目的としたオウンドメディアのコンテンツの一例は以下の通りです。
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こうしたコンテンツを発信し、企業のメッセージに共感する応募者を集めることで、入社後のミスマッチを最小限に抑えられるといった効果も期待できます。
マネタイズ
ある程度のアクセスを集めるオウンドメディアなら、広告・有料コンテンツの展開や商品の購入促進などによってマネタイズ(収益化)することも可能です。たとえば、オウンドメディア内に広告枠を設けて広告掲載料を受け取ったり、他企業の商品・サービスを紹介する記事広告で購入を促したり、コンテンツの一部を有料記事にしたりすることで収益を生み出せます。また、オウンドメディア内で自社の商品・サービスを紹介して、購入に繋げるといった方法もあります。
ただ、メディア内に広告が貼り付けられたりコンテンツが収益化されたりすることで、かえってブランドイメージを損ねる恐れもあります。マネタイズ施策は慎重に進める必要があるでしょう。
ステップ②:ターゲット・ペルソナを設定する
オウンドメディア構築の目的を定めたら、次に訴求すべきターゲットを設定します。どの層に向けて情報を発信したいのか、明確に決まっていないと発信の軸がぶれてしまい、期待するような効果は得られません。また、ターゲットを設定する際は単に『若い女性』とするのではなく、以下に挙げるような細かいデータまで設定し、できるだけ具体的な人物像に落とし込むことが重要です。
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このような主要ターゲットとなる具体的な人物像を『ペルソナ』と呼びます。コンテンツ制作においては、ペルソナとなる人物のニーズを満たす情報、課題解決に繋がる情報発信を意識することで、アプローチの効果が高まります。ペルソナ設定においては、既存顧客のデータや顧客と接している担当者からの情報が参考になります。
ステップ③:制作・運用の方向性を決める
ペルソナを設定したら、どのようなコンテンツを制作し、どう運用していくか、オウンドメディア運用の方向性を定めます。
コンテンツの制作においては、基本的にペルソナのニーズを満たす、または悩みや課題を解決できる内容であることが求められます。加えて、特定のキーワードで検索したときに自社のコンテンツが上位に表示され、ターゲットとなる顧客層にリーチできる内容でなくてはいけません。そのためには、ユーザーのニーズを捉えたキーワードを選定し、質の高いコンテンツを継続的に制作する必要があります。
社内にコンテンツ制作が可能な人材を有していれば自社運用も可能ですが、もしそうした人材のリソースがなければ、制作会社への外注も検討しなくてはいけません。また、ブログ記事にするか、メディアサイトにするかといったコンテンツの形式によっても運用に必要なリソースは異なります。自社の人的・資金的リソースを把握した上で、オウンドメディアの制作・運用方針を検討してください。
ステップ④:目標(KPI)を設定する
最後に、オウンドメディア運営における目標を設定します。ここでいう目標とは、最終的なゴールではなくKPI(重要業績評価指標)、いわば中間目標を指します。最終的な目標が『売上高120%アップ』だとしたら、中間目標は『アクセス数〇%アップ』『クリック率〇%アップ』のような数字で表されます。
KPIは四半期・6ヶ月・1年と中長期的な期間で区切って目標に対する成果を測定、施策の振り返りを行います。評価基準は企業やオウンドメディアの目的によってさまざまですが、一般的には以下のような指標が使われています。
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社内稟議を通すオウンドメディア企画書作成のポイント
オウンドメディアの企画を社内で通過させるために、企画書作成において抑えておきたいポイントを紹介します。
オウンドメディアの必要性とメリットを訴える
オウンドメディアの企画書を作成する際は、自社にとってなぜオウンドメディアが必要なのか、メディア運用によって得られるメリットは何かを明確に打ち出し、決裁者の理解を得る必要があります。特にオウンドメディアは短期的な運用で効果を生み出すことは難しく、中長期的な運用が必要となるため、工数や時間をかけて運営する意義を示す必要があります。
先述したオウンドメディア運用の目的・効果を踏まえて、自社がオウンドメディアを設立・運営する必要性やメリットについて、できるだけ具体的な文言で提示できると良いでしょう。
目標値を明記する
企画書には、オウンドメディア運営によって達成する目標値を明記します。目標の例には例えば、以下のようなものが挙げられます。
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目標値が具体的でない、または説得力がない場合、企画書が通らない恐れもあります。目標数値は、自社の業種や事業規模の近い他社を参考に設定すると説得力が増します。また、オウンドメディア運用の現場ではPVやSS、CVの数が重視されますが、上司や上役はさらにその先の売上や費用対効果を重視する傾向があります。企画書の作成においては、誰に読ませるかということも意識した上で目標を記載しましょう。
必要なリソースや運用体制を具体的にする
オウンドメディアに必要なリソースと、どのような体制でメディア運営業務を行っていくかを具体的に示します。特に、自社でオウンドメディアを運用する場合は中長期的に参画できる人材を確保しなくてはいけません。
専門のチームを作る必要があるのか、担当者がコア業務と兼任するのか、メンバーは何人必要なのか、進捗管理やコミュニケーションはどう行うかといった具体的な運営体制に落とし込み、プロジェクトの運用体制をシミュレーションします。また、オウンドメディアの運用形式によっては、記事制作だけでなくサイト構築やコーディング、デザインといった業務に人員が必要となる点にも注意が必要です。
運用にかかるコストを示す
オウンドメディア運営においては、自社で運用する場合でも制作会社に外注する場合でも必ず費用がかかります。もし制作会社に外注し、新たにオウンドメディアサイトを立ち上げる場合は、以下に挙げる費用が発生します。
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制作会社によっても異なりますが、オウンドメディアの制作を外注する場合、サイトの新規構築で50〜100万円、その後の運用や分析・マーケティングまで委託する場合では、数百万〜1,000万円の費用がかかるともいわれています。どの工程を外注するかにもよりますが、オウンドメディアは中長期的な運用が必要となります。費用対効果と自社の予算配分を考慮し、納得感のある現実的な予算設計を行いましょう。
他社の事例を参照する
他社の成功事例を参照することで、企画書の内容により説得力を持たせることができます。自社の業種や事業規模、商材に類似性のある他社オウンドメディアの成功事例を提示すれば、オウンドメディア運用の効果や意義を強くアピールできます。また、他社のさまざまなオウンドメディアを比較することは、自社のメディア構築・コンテンツ制作のヒントにもなるでしょう。
オウンドメディアの成功事例として、以下のサイトが挙げられます。
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オウンドメディアの企画・アイディアの出し方のコツ
これからオウンドメディアの運営を始める担当者に、企画・アイディアの出し方のコツを紹介します。
アイディア出しは複数人で行う
企画・アイディア出しは1人で行うよりも、複数人で集まって行う方が多種多様な意見が得られます。これをブレインストーミングと言いますが、ここではメンバー1人1人が「良い発案をしよう」と気負わず、自由な発想で発言することで良いアイディアが生まれます。
ブレインストーミングで独創的なアイディアを生むためには、どのような発言や意見も否定しないこと、また、その場で結論を出そうとしないことが重要です。複数人でたくさんのアイディアを持ち寄り、展開していくことがこれまでにない画期的な企画の誕生に繋がります。
社内全体にアイディアを募る
オウンドメディアや企画担当者だけでなく、社内のあらゆる部署から企画のアイディアを募ることも有効です。例えば、営業やカスタマーサービス部門では、日々顧客と直接やり取りをしていますので、顧客のニーズや悩み・困りごとなどをどの部門よりも良く把握しています。そのため、このような部門から企画のアイディアを得ることで、顧客が本当に求める有益なコンテンツの制作が可能になります。
オウンドメディア企画には外部ノウハウや他社事例も役立てよう
オウンドメディア運用はリード獲得・認知拡大・人材獲得など、さまざまな効果が期待できる施策です。しかし、一からメディアを立ち上げ、制作を行うには人材や資金などのリソースのほか、企画・運用ノウハウも求められます。
シーラベルでは経験豊富なコンサルタントがマーケティング戦略や施策の立案、コンテンツ設計・制作までを一貫してサポートするコンサルティングサービスを行っています。効率的・効果的なオウンドメディアの設立・運用を目指すなら、豊富なマーケティング経験とノウハウを持つシーラベルにご相談ください。
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