BtoB向け【業種別】オウンドメディアの成功事例10選

オウンドメディアとは、「企業が運営しているメディア」を意味します。ホームページやSNS、パンフレットなど、企業が情報発信するものならば何でも含みますが、一般的にはWebマガジンやブログなど、インターネット上のメディアを指すことが多くなっています。

近年、オウンドメディアが注目を集める理由は、優れた集客効果があるためです。商品やサービスに関心を持ってもらい、ゆくゆくは売上につなげることも期待できます。

BtoC企業に比べて商品やサービスが分かりづらいBtoB企業にとって、オウンドメディアは多くの人に自社のことを知ってもらう強力なツールです。今回はオウンドメディアで成功しているBtoBの企業事例をあげるとともに、成功のポイントや気をつけたい点について解説します。

BtoBがオウンドメディアを運営する目的、メリットとは

BtoB企業の中には「自社の商品を知ってもらう機会が少ない」と悩む方は多いのではないでしょうか。せっかく商品を作っても「知名度がない」というだけで、売り上げにつながらないのは大変残念です。

オウンドメディアで情報発信すれば、情報が拡散されるため、次のような効果があります。

営業の見込み客が獲得できる

BtoBビジネスはBtoCに比べて受注単価が高額になりやすく、「受注にいたるまでの検討期間が長くなる」という特徴があります。

オウンドメディアなら、いま購入検討中の顧客だけでなく、購入するかどうか悩み中の顧客や、まだニーズが顕在化していない顧客(見込み客)にもアプローチできます。すぐに購入につながらずとも、いざ必要になった際に、候補に上がりやすくなるのです。この見込み客を育てることを「リードナーチャリング」と言います。

商品・サービスの理解が深まる

BtoB企業の中には、情報発信の機会が「年数回の展示会しかない」という場合もあるでしょう。パンフレットやホームページがあっても、それだけでは顧客にアプローチする機会が不足してしまいます。しかもスペース上の問題から、全ての情報を網羅することは難しくなっています。

BtoB企業の場合、発信したい内容が複雑で専門的すぎとなり、情報がまとめきれない・・・という悩みも多いでしょう。その点、オウンドメディアは情報量に制限がなく、さまざまな情報を伝えられるので、商品やサービスの強みが伝わりやすくなっています。たくさんの情報からじっくり検討してもらうことが可能なので、その結果、商品やサービスに対して理解が深まるだけでなく、信頼感も増すでしょう。

専門的な内容でもリーチできる

さらに、オウンドメディアならターゲットを絞り込んだ情報発信ができるのもメリットです。どんなに専門的な内容であっても、ターゲットが欲しがる内容やキーワードをピンポイントで入れ込むと、読者がキーワード検索することによって、自然に自社サイトに流入してくれます。 

「知りたい情報が書いてあった」と共感してもらえたり、顧客が購入を迷っている時は「導入事例を見て購入を決めることができた」と喜んでもらえるでしょう。 

BtoBオウンドメディア【業種別】成功事例10選

実際にオウンドメディアで成功しているBtoB企業とは、どんなテーマや切り口で情報発信をしているのでしょうか。具体的な事例をあげてご紹介します。

【パソコン】Work×IT

2014年にソニーから独立したVAIO株式会社。現在は軽量・薄型のモバイル・ノートパソコンの製造および販売と、受託事業(EMS事業)を行っています。自社オウンドメディアでは、法人向けにITに関するさまざまなコンテンツを提供しています。

ITを活用した働き方改革や、生産性向上のヒント、組織づくり、マネジメントなど、ビジネスシーンにあわせた内容にすることによって、サポート領域の紹介や対応できるソリューションの提案につなげています。

【システム】サイボウズ式

「サイボウズ式」は、ビジネスアプリ作成クラウド「kintone」やグループウェア「サイボウズOffice」を開発するサイボウズが運営するオウンドメディアです。

もともとサイボウズの製品は、チームの生産性やマネジメントを効率化するためのものです。在宅勤務や副業をしながら働く社員紹介や、有識者インタビュー記事など、働き方やワークライフバランスに関するコンテンツを発信してきました。 

同社はオウンドメディアを立ち上げる前、離職率の高さや売上に課題を抱えていたそうですが、情報発信することによってリード獲得だけでなく、ブランディングや採用イメージの向上につながったといいます。

【会計】Freee

BtoB、BtoCの両方に会計ソフトを提供しているfreeeのオウンドメディアです。経営者や個人事業主に向けて、会計や経理、確定申告などのコンテンツを配信しています。

 会計の知識で分からない用語が出てきた時、検索すると真っ先に表示されるサイトなので見たことがあるかもしれません。Freeeの製品やサービスのことは知らなくても、SEO対策を施すことで自然に見込み客が獲得できる仕組みとなっています。

ここまでSEO対策を施すのは難しいかもしれませんが、サイト構造やコンテンツの書き方などは大いに参考になるはずです。

【工業】東海バネ工業

オーダーメードの金属ばねをつくる東海バネ工業が運営するオウンドメディア「ばね探訪」は、さまざまなモノづくり企業を取材し発信しています。

取材先は他社(顧客企業)ばかりで、自社製品の話はほとんど出てきません。これはメディアを「自社製品をアピールする場」ではなく、「ものづくりの素晴らしさを知ってもらう場」として位置づけているためです。 

同社は完全オーダーメイドのため、カタログがない代わりにオウンドメディアを通じて高品質・高機能へのこだわりを発信してきました。いまでは商談のほとんどが、サイト経由による問い合わせなのだそうです。

【オフィス家具】コクヨ

BtoB向けにオフィス用品、空間デザインなどを手がけるコクヨ。同社は、社員が固定席ではなく、好きな席で働く“フリーアドレス”をいち早く導入するなど、働き方研究の社内組織を90年代に設立しました。並行して立ち上がったのが、『WORKSIGHT』というオウンドメディアです。

 海外のスタイリッシュなオフィスデザインや最先端の働き方など、ワークプレイスにまつわる情報を発信。また有識者や研究者、注目のリーダーたちが、労働環境の抱える課題や、コミュニケーションの未来像を提言しています。

長年、働く環境について先進的な研究をしてきたコクヨならではの情報発信と言えるでしょう。

【製造】山洋電気

モーターや冷却ファンなど工業用製品を開発する山洋電気のオウンドメディア「TECH COMPASS」は、自社の技術やものづくりを紹介しています。

ターゲットとしているのは研究者や技術者などの専門家。顧客の課題解決につながる技術紹介をめざしています。たとえば、「低消費電力につながるファン」など使用例の紹介や、開発の背景、よくあるトラブルの対策方法など、専門的な内容をオウンドメディアでうまくアピールしています。

読者にとって課題を解決する方法が分かるので、有益であるだけでなく、製品の信頼アップにもつながっています。

【建設】清水建設

ゼネコン清水建設の歴史は江戸時代までさかのぼります。同社のオウンドメディア「Our Heritage」では、200年以上にわたる会社の歴史を年表で紹介。また「社宝」と呼ばれる貴重な絵画や、考古資料も掲載しています。

清水建設が手がけた「赤坂離宮」や「東京大学図書館」など、歴史的建造物の紹介コラムもあり、マニアだけでなく一般の方も楽しめる内容です。

ある意味、企業ミュージアムのようなサイトとなっていて、企業ブランディングやイメージ向上につながっています。

【商社】大塚商会

CADなど設計ソリューションにまつわるオウンドメディア「CAD Japan.com」は、大塚商会によって運営されています。

製造業や建設業の技術者向けに、製品情報や導入事例、動画などが分かりやすくまとめられています。また製造業や建設業が抱える課題を解決する、VRや3Dプリンターなど最先端の製造技術や設計ツールの情報も満載です。新しいテクノロジーを試してみたいという、エンジニア心をくすぐるコンテンツとなっています。

もっと詳しく知りたいという読者のために、記事の最後ではセミナーやイベント、ホワイトペーパーも用意しているので、読者はじっくり導入検討することができるでしょう。

【金融】アルヒ

住宅ローン専門の金融機関アルヒは、住宅購入を検討している人に向けたお役立ちメディア「ARUHIマガジン」を運営しています。「住まい」「お金」「暮らし」の3つのカテゴリーで構成されており、メディアの目的が分かりやすいところが魅力的です。

ライフスタイルの豆知識から、住宅にまつわる保険、ローンの基礎、お得な制度などの情報が充実しており、読者は幅広い知識を習得できます。

記事の最後では、自社の住宅ローンサービスも紹介しており、自然な形でリード獲得につなげています。

【印刷】プリマール

印刷通販サイトのプリマールが運営するオウンドメディア「IRODOLIC(イロドリ)」では、印刷やデザインを身近に楽しむ有益な情報を発信しています。

たとえば、「エコ紙でつくる団扇のデザインプレート」や「イラスト素材を無料で使えるサイト」など、お役立ち情報が満載です。とくに面白いのが、編集部がさまざまな印刷にチャレンジした事例記事。「やってみた」というカテゴリーで、自ら季節のオリジナル販促物をつくるなど、読み物としても非常に面白くなっています。 

オリジナルな個性を感じるコンテンツが充実していて、ファンの共感を呼び、「やってみたい」という意欲をかきたてるものとなっています。

BtoBオウンドメディア 成功するポイント

成功しているオウンドメディアには、どんな共通項があるでしょうか。押さえておきたいポイントは以下の3つがあります。

目的が明確である

オウンドメディアの効果が出始めるまでに、少なくとも1年以上はかかります。今回の成功事例に挙げたオウンドメディアも多くは3年以上継続しているものがほとんどです。途中で目的を見失わないように、ゴールをきちんと決めておくことが大切です。

ゴールとは、たとえば以下のようなものが考えられます。

  • リード(見込み客)を獲得したい
  • 認知度を向上させたい
  • ブランディングをしたい

 目的の設定は、オウンドメディアを始める上での出発点です。しっかり考えて決めましょう。

最適な運用が行われている

2つ目の成功ポイントは、成果に導く運用がされていることです。目的であるゴールから逆算して適切な運用方法を考えましょう。 

たとえば、見込み顧客の獲得をゴールとするならば、「比較検討中」の顧客をターゲットとするコンテンツを配信し、「お問合せ窓口」や「資料請求ボタン」に導く誘導線を引かなければなりません。

継続的に改善している

実際に効果がでているか検証して、サイト改善も積極的に行いましょう。効果検証にはKPIの測定が有効です。

オウンドメディアでいうKPIとは、たとえば訪問者数や問い合わせ数などが設定されます。数値をもとに改善ができるため、目標達成に向けてどんなアクションをすべきか考える指標となるものです。

オウンドメディアの成否は、目的からぶれず、改善を繰り返しながら長期目線で継続できるかどうかにかかっていると言えるでしょう。

BtoBオウンドメディアでつまずくポイント

逆にオウンドメディアが失敗する理由とは何でしょうか。よくある失敗パターンは以下です。 

お客様のニーズに合っていない

専門性が高いBtoB企業の場合、読者ターゲットが間違っていたり、内容がニーズと合っていなかったりすると、一生懸命コンテンツをつくっても効果が出ません。ミスマッチを防ぐためにも、なるべく顧客のことを知るように努めましょう。 

たとえば、普段からなるべく営業に同行したり、お客様からの問い合わせに対応したりして、現場のニーズをつかむことをおすすめします。

次第に「お客様があんな情報を欲しがっていたな」とか、「こういうところに課題を感じているのか」と見えてくるでしょう。企画のアイデア力が高まれば、コンテンツの質もどんどん増していくはずです。

他社のサイトを真似している(オリジナル性がない)

競合他社や目的に近いサイトを参考にするのは重要ですが、内容をそのまま真似するのは問題があります。ましてや嘘をつくことは会社の信頼を落とすことにつながりかねません。

参考にする場合には、記事のテーマや切り口、どういう人をターゲットとしているかベンチマークする程度に留めましょう。

たとえば、「他社とは少し違う切り口にする」「コンセプトを変える」などです。他とは違うカラーを出すことによって、御社の強みや個性が伝わりやすくなります。オリジナルなコンテンツが、読者の注意を引き、結果的に選んでもらうことにつながります。

コンテンツを制作する人手が足りない

オウンドメディア担当者の頭を悩ます問題で最も多いのは、コンテンツを制作する時間や人手が足りないことでしょう。広報担当者や総務担当者が兼任している場合も多くなっています。「企画のテーマを決めるのに苦労する」「記事執筆が大変だ」という声がよく聞かれます。

成功しているオウンドメディアの中には、プロの編集者を雇ったり、外部のコンテンツ制作会社に依頼している場合もあります。「自分達の力だけでは知識やリソースが足りない・・・」という場合は、外部の専門人材に頼るのも一つの方法です。 

まとめ

オウンドメディアの運用はリード獲得・認知拡大・ブランディングなど、さまざまな効果が期待できます。しかしながら、メディアを立ち上げ、制作、運用のPDCAを回すには莫大な人手や予算が要るほか、企画力や運用ノウハウも求められます。

シーラベルでは経験豊富なコンサルタントがマーケティング戦略や施策の立案、コンテンツ設計・制作までを一貫してサポートするコンサルティングサービスを行っています。

「自社のオウンドメディアを企画するのが大変そう」「運営してもなかなか効果が出ない」と感じるのであれば、一度、ご相談ください。効率的・効果的なオウンドメディアの設立・運用を、豊富なマーケティング経験とノウハウを持つシーラベルが支援します。

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